著者インタビュー(第5回) 「山口百恵」という音楽世界

【川瀬泰雄プロフィール】
東京音楽出版(現ホリプロ)入社後、山口百恵の引退までプロデュース。そのほか井上陽水、浜田省吾等のプロデュースも担当、現在まで約1600曲をプロデュース。




山口百恵さんの音楽は、独特の世界観がある歌と
いろいろなジャンルのエッセンスが散りばめられた
高い音楽性が魅力となっています。
その音楽世界について、川瀬さんにお聞きしました。


アイドルとしてデビューした山口百恵さんに、
「横須賀ストーリー」など従来の歌謡曲とは違う
ロック色のある曲を作ったのは、
井上陽水さんや浜田省吾さんなどのお仕事を
されていたことと関係はありますか?

:特別、関係はないと思います。
 それほど意識はしていませんでしたが、
 僕自身がエルビス・プレスリーから始まって
 ビートルズやレッド・ツェッペリンや
 ヴァン・ヘイレンなど、ロックンロールが
 ずっと好きだったことのほうが
 影響していると思います。

従来の歌謡曲路線ではなく、新しい音楽作りを
意識された動機などはありますか?

:ディレクターという仕事をやり始めた当初から、
 もともと僕自身の中には、
 大好きなロックの要素がありました。
 当然、歌謡曲といわれているジャンルにおいても
 同じ感覚で聞いていましたので、
 どんな曲でも…仮にスローな曲調でも、
 ルーツにロックのフィーリングが流れていないと
 満足ができませんでした。
 これはアップテンポの曲に限ったことではなく、
 演歌のような曲でも、たとえば石川さゆりさんの
 「津軽海峡冬景色」や「天城越え」、
 坂本冬美さんの「夜桜お七」などには、
 ロックのテイストを感じるのです。

山口百恵さんの音楽は、ロック以外にも
ラテンやフラメンコ、ジャズ、カントリー…
様々なジャンルが入っていますが、すごく自然に
取り入れられていると思います。

:もちろん最初の頃はここまでだったら、
 音楽的に百恵さんがついて来れるだろうという、
 多少、余裕を持った作り方だったのですが、
 気がついたらこれでは、逆にこちらが追い越されて
 しまいそうだ、というところまで、
 本人の成長には著しいものがありました。
 ビートルズがあらゆるジャンルの要素を
 取り入れて大きく成長していき、
 それでもあくまでもビートルズだったように、
 百恵さんもいろいろなジャンルの音楽を取り入れて
 「山口百恵」という世界を変えずに成長して
 いけると思い、少しずつ様々なジャンルを
 取り入れていきました。

いろいろな作家の方に曲を依頼したのも、
音楽の幅を広げる狙いもあったのですか?
プロデュースで意図されたことは?

:同じ作家さんに作って戴くのも、
 アーティストのカラーを決める時には
 大事なことだと思いますが、ビートルズは
 色々なアーティストの曲をカバーして
 レコーディングしたり、ジョン・レノン、
 ポール・マッカートニー、ジョージ・ハリソンという、
 持ち味の違う作家がそれぞれの個性を生かして
 作った曲で成長し、音楽界をリードしてきました。
 まして百恵さんの時代では、一般のリスナーがすでに、
 そのビートルズなどの洗礼を受けてきた人たちなので、
 僕たちも、できるところまでやってみようという結果、
 『曼珠沙華』のような独特の「山口百恵の世界」が
 出来上がりました。
 どんなジャンルの曲を歌うかというよりも
 「山口百恵」というジャンルを作っていきたい
 と思っていました。


編集部:山口百恵さんの深い音楽には、
貪欲に良質な音楽を作りたいという
川瀬さんの熱い思いが込められています。

次回はいよいよ最終回。
惜しまれる引退までのお話をお聞きしますので、乞うご期待!


Archives————————————————

著者インタビュー(第1回)「山口百恵の音楽とは?」

著者インタビュー(第2回)「当時のデモテープについて」

著者インタビュー(第3回)「当時のデモテープについて・続編」

著者インタビュー(第4回)「音楽プロデューサーの仕事について 」

「プレイバック制作ディレクター回想記 音楽「山口百恵」全軌跡」

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