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初めて経験した生命の誕生、神秘生物

1970 ありのあぱーと
1K / 9号

アリの巣観察、昆虫採集セットなど数多くある生物系ふろくの中でも、最も印象深かったのが卵つきのものではないだろうか。それは67年、5年生「拡大えい写機」で、映して見る用にプランクトンの卵がついたことから始まった。当初はあくまでも拡大して見る対象物としてのおまけ的扱いであったのが72年、6年生の「プランクトン飼育セット」として独立。71年学習指導要領改訂で追加された「水中の小さな生物」に準拠したもので、単元が移動した80年からは「小エビ」又は「ブラインシュリンプ」と名を変えて5年生に戻され、87年まで継続。さらに84年からは「おばけえび」というネーミングで1年生の夏のふろくとして定番化した。

79年には、2年生「池や小川の生物」単元に準拠した「カブトエビ飼育セット」が登場し、こちらも定番化。泥ごと採取して乾燥させた卵を使用したため、他の生物の卵が混ざる場合があった。写真とは違う生物が生まれてびっくりした読者がいたのではないだろうか。その中のひとつ、ホウネンエビの卵を繁殖させたものを87年に3年生でふろく化。これは低温の水では孵化しないため、水温を計るための温度計もセットになっていた。しかし卵の確保が困難になり、87 ~ 92年の短期間しか続けることができなかった。かわって登場したのが92年からの「スズムシ飼育セット」。3年生の6号であったから、5月末に乾燥卵をまいて夏の間鳴き声を楽しめる。数日で孵化するカブトエビやブラインシュリンプとは違って40日ほどかかった。そのため、卵のことをすっかり忘れて放置してしまい、育てられなかった読者もいたかもしれない。

余談だが、カブトムシ、クワガタなど他の生き物をふろく化すべく試行錯誤を重ねた時期もあった。しかし地域による気温差の問題から断念。都会の子どもたちにはとても嬉しいふろくになったはずだが非常に残念である。ともあれ、1年生はブラインシュリンプ、2年生はカブトエビ、3年生はスズムシの、カラカラに乾いた粉にしか見えない卵から、小さな生き物が孵って愛らしく動きまわる様子に感動したことは間違いない。

  1. 1976プランクトン発生飼育セット
    6K / 7号