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コラム・マンガ

ひとりじゃないよ~子どもが安心するには?~・後編

ひとりじゃないよ~子どもが安心するには?~・後編

あかはなそえじ先生の院内学級の教師として学んだこと「第31回」

院内学級の教師として、赤鼻のピエロとしてかかわるなかで、笑顔を取り戻し、治療に向かう意欲を高めていく子どもたち。その経験をもとに、子どもとの接し方や保護者・家族とのかかわり方、院内学級の必要性、教育の重要性などについて語ってくれます。

~「自分のことを大切に思えない」女の子~

ある中学生の女の子。その子はいろいろな人とのかかわりの中で、食事をとることが困難になりました。院内学級に顔を見せてくれるようになっていたのですが、からだのことや食事の話になると、どこまで入っていいのか、どのようにかかわっていいのか、相手にどこまで近づいていいのかを測りかねていたのです。

とても良い子なので、大人とのおしゃべりにも笑顔で付き合ってくれるのですが、こちら側が見誤ると、すぐにつかれてしまいます。こういう状態は、女の子を大切にしていることにはなりません。そんなとき、女の子が言う「だって、自分のことだから」との言葉に気がつきました。

女の子はベッドサイドでも、私たち院内学級の先生を受け入れてくれ、好きなことや興味のあることの話などをしてくれるようになりましたが、それでも、食事に関係する話題や、病気を治すことの話になり、もうこれ以上は入ってほしくないと思うときに、ボソッと「だって、自分のことだから」と話を終わりにしようとしたのです。

もちろん、いつもその話題がいやなのではなく、話をしたいとき、聞いてもらいたいときもあるのですが、それでも、もうこれ以上その話題を進めなくてもいいと思うときに、使う言葉でした。

自分のからだに対するいかりや悲しみ、くやしさを女の子から感じました。あきらめに近い感覚が伝わってくることもありました。ふだんはおだやかな女の子でも、体調が悪いときやドクターとの話し合いの中で心が大きくうねることがありました。どうしようもない気持ちをぶつけてくることもありました。そんなときでも「女の子をひとりにしない」と思います。子どもたちの心が大きくゆれているときにとなりで、どかっと腰をおろしていられる力が自分にほしいと思いました。

~「そばにいるよ」を伝えたい~

ゆれているのは子どもたちだけではありません。保護者もそうですし、病院のスタッフもそうです。院内学級の先生たちもそうです。かかわっている子どもたちの状態が重ければ重いほど、周りの人間もしんどさをもらい、大きくゆれます。こちら側にも怒りや悲しみがわいてきて、それまでのかかわりが難しくなることもあります。ただ、こんなときこそ、よけいにしんどい思いをしている子どもたちのとなりで、そっとそばにいられるようになりたいと思いました。相手が「私はひとりじゃない」と思ってもらえるように、と考えて。

子どもたちのとなりにいて声を聞き、思いを大切にし、傷つけないようにする。そんなかかわりをしていて、よく言われたことがありました。
「そんなに優しくして、子どもが退院したくなくなったら、どうするの?」
「退院したら、やりたくないことだって、きちんとやらなければいけない。社会はそんなにあまくはないでしょう。だいじょうぶなのですか?」

もちろん、ときどきでしたが、退院したくないというお子さんもいました。学校や家庭での生活にストレスをかかえ、それが形となってからだに表れているお子さんたち。でも、多くの場合、「ここにいたい」「もう少しいたい」と表現できるようになったお子さんたちの、再入院はほとんどありませんでした。

前回記事
第30回はこちら。

Information

「あかはなそえじ先生のひとりじゃないよ」
四六判・全248ページ
1400円+税
学研教育みらい刊

あかはなそえじ先生・副島賢和(そえじま まさかず)

筆者:あかはなそえじ先生・副島賢和(そえじま まさかず)

昭和大学大学院保健医療学研究科准教授、昭和大学附属病院内学級担当 1966年、福岡県生まれ。東京都の公立小学校教諭を25年間務め、 1999年に都の派遣研修で東京学芸大学大学院にて心理学を学ぶ。 2006年より品川区立清水台小学校教諭・昭和大学病院内さいかち学級担任。2009年ドラマ『赤鼻のセンセイ』(日本テレビ)のモチーフとなる。2011年『プロフェッショナル 仕事の流儀「涙も笑いも、力になる」』(NHK総合)出演。2014年より現職。学校心理士スーパーバイザー。ホスピタルクラウンとしても活動中。

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