そのかかわりはだれのため?~主役は子ども~(後編)
あかはなそえじ先生の院内学級の教師として学んだこと「第41回」
院内学級の教師として、赤鼻のピエロとしてかかわるなかで、笑顔を取り戻し、治療に向かう意欲を高めていく子どもたち。その経験をもとに、子どもとの接し方や保護者・家族とのかかわり方、院内学級の必要性、教育の重要性などについて語ってくれます。
~大人ファーストではなく、子どもファーストでありたい~
前回のお話の続きです。入院しているお子さんにとってとてもうれしい情報でしたが、まだハッキリ確定していなかったため、その子に会いに行く先生に「変わってしまう可能性があるので、その話は絶対に言わないでくださいね」と念をおしたのに、その子に伝えてしまった先生。なぜ、その先生は伝えてしまったのでしょう。
病室におみまいに行った経験のある方はわかるかもしれません。病人がねているベッドの横で話をしているとき、座ってみているとき、ふと会話がとぎれてしまうことがありますよね。それがとくに子どもたちの場合、子どもが時折、沈んだ表情をみせることがあります。
そんなとき、私たちはつい、その場を明るくしようとしたり、盛り上げようとしたりするため、何かうれしい情報や楽しい話題を見つけて、伝えようとします。頭の中で「この子のためだからいいだろう」と思いながら。
しかし、おわかりですよね。これは決して子どものためではありません。先生自身の不安を解消するための言動です。苦しくなったこの場を少しでも変えるために。
しかしそれが、結果的に子どもを傷つけてしまうかもしれないのに、です。
~「子どもが主役」ということ~
楽しみしていたアニメ番組の放送時間帯に、病室を訪れてかかわってくれた先生もそうかもしれません。「子どもたちを笑顔にしたい」とベッドの上の子どもたちのことを考え、小道具を用意して、かかわる練習をして。そんな先生とかかわる時間は、子どもたちや保護者の方にとって、とてもうれしい時間となることでしょう。
ただ、大人たちが時間や労力をかけて準備をすればするほど、目的が変わっていってしまうことが多々あります。「子どもが主役」でなくなってしまい、「先生が主役」になっているのです。
不安になったときや、やることが目的となってしまったとき、目の前にいる子どもたちが見えなくなってしまいます。頭の中で先生や大人自身がつくりあげた「子ども像」にかかわっているに過ぎないのです。
これでは、子どもたちは、相手が本当に「自分のことを考えてくれている」と思えるはずがありません。
保護者の方はこの場合の対応をわかっていて、「先生のお話を聞いてね」「いそがしいのに先生があなたのために来てくれているのだから」と、笑顔でお子さんにメッセージを送ります。これを感じた子どもたちも、笑顔で「先生、ありがとう」と言います。
本来は「子どもが主役」であるため、子どもたちにとって自分を大切に思える時間を過ごすことが必要なのです。それが、子どもたちのエネルギーとなるのです。
病気を治すことに向かう、何かにチャレンジする、がまんをする。そのエネルギーをためるために、目の前にいるお子さんを見て、感じて、その子にとって本当に必要なことはなんなのかを考えることを、私たちはしっかり行っていきたいですよね。
先生だけでなく保護者の方や子どもにかかわるすべての大人たちが、自分ひとりだけの感覚ではまちがってしまうことが多いでしょう。もっと多くの方とつながって、子どもからも情報を取り、子どもたちが「自分はかけがえのない存在である」と思えるかかわりを、みなさんとずっと続けていきたいと考えます。
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第40回はこちら。
Information
「あかはなそえじ先生のひとりじゃないよ」
四六判・全248ページ
1400円+税
学研教育みらい刊