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コラム・マンガ

病気の子どもの保護者を支える・前編

病気の子どもの保護者を支える・前編

あかはなそえじ先生の院内学級の教師として学んだこと「第84回」

院内学級の教師として、赤鼻のピエロとしてかかわるなかで、笑顔を取り戻し、治療に向かう意欲を高めていく子どもたち。その経験をもとに、子どもとの接し方や保護者・家族とのかかわり方、院内学級の必要性、教育の重要性などについて語ってくれます。 

「やっぱり学校に行ってほしい」

毎年、毎回、多くの学校や研修会に呼んでいただいて、お話しをさせていただいています。本当にありがとうございます。たくさんの方々と出会えることに感謝しております。

それは、ある研修会での出来事でした。講演が終わったあとの質疑応答の時間に、一人の保護者の方が勇気をもって質問されました。

「子どもの命にかかわるくらいなら、学校なんかに行かなくていいと思っています。でも、心のどこかでやっぱり学校には行ってほしいと思っている自分がいます。どうしたらよいのか、まったくわからなくなっています」

講演会には教師もたくさんおられました。その中で、本当の気持ちをお話になられたことは、とても勇気がいることだったのではないかと思います。

子どもの変化に気づいていますか

2学期が始まる前の時期に、「9月1日と児童生徒の自死」について報道されることがよくあります。そこでは「命を落とすくらいなら、学校に行かないことを選んでほしい」と伝え、保護者の方々にもメッセージがわたされます。

「子どものSOSに気づいてあげてください」

「子どものささいな変化もみのがさないでください」

「保護者から“学校には行かなくてもだいじょうぶ”だということを伝えてあげてください」

たしかに、これらのメッセージはまちがってはいません。保護者の方々も「気づいてあげたい」「みのがしたくない」「伝えたい」と思っています。

でも、子どもたちがSOSを出すのは、本当にギリギリになってからのことが多いのです。それは保護者に心配をかけたくないと思っているからです。

それを保護者側が、SOSがわかった、子どもから伝えられた、というときがスタートだとまちがえてとらえてしまいます。その結果、「大変だけど、だれでも同じようなことがあるから、もうちょっとがんばってみて」と言ってしまいがちです。

学校とはどんな場所だろうか

ただ、たとえ早めに子どものささいな変化に気づいたとしても、対応することはなかなかむずかしいことです。

「あのとき、どうやって声をかけたり、かかわったりすればよいのか、わかりませんでした」「そのあと、何も言わないので、まだだいじょうぶなのかと思っていた」

そうなると、はじめのほうでお話した保護者の「学校に行かなくてもいいと思っている」と本気で考えることは、実はかんたんなことではないとわかります。

とくに、自分がつらいときにがんばり通した体験をもっていたり、大人になった現在も仕事でがんばっていたりすると、心のおくで「がんばってのりこえることも大切なこと。逃げてはいけないよ」という考えが出てきてしまうのは、当然のことではないでしょうか。

子どもたちは、大人(とくに保護者の方々)がいだいている社会通念をとりこんで生きています。思春期以前の子どもたちにとっては、それは生きていく上でとても大切なこと。もちろん、大人の方もそうやって生きてきたはずです。

そのため、「学校は行くべきところ」「逃げてはいけない」という考えは、だれしもが心のおく深くにもっているのではないでしょうか。家族でこの話題について話し合ってみる、きっかけになればいいなと思います。

次回はこのお話の続きとして、体験から学んだ「だれにとっての幸せか」ということをお話します。

Information

「あかはなそえじ先生のひとりじゃないよ」
四六判・全248ページ
1400円+税
学研教育みらい刊

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あかはなそえじ先生・副島賢和(そえじま まさかず)

筆者:あかはなそえじ先生・副島賢和(そえじま まさかず)

昭和大学大学院保健医療学研究科准教授、昭和大学附属病院内学級担当 1966年、福岡県生まれ。東京都の公立小学校教諭を25年間務め、 1999年に都の派遣研修で東京学芸大学大学院にて心理学を学ぶ。 2006年より品川区立清水台小学校教諭・昭和大学病院内さいかち学級担任。2009年ドラマ『赤鼻のセンセイ』(日本テレビ)のモチーフとなる。2011年『プロフェッショナル 仕事の流儀「涙も笑いも、力になる」』(NHK総合)出演。2014年より現職。学校心理士スーパーバイザー。ホスピタルクラウンとしても活動中。

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