Now Loading...

コラム・マンガ

学研の俳句おにいさんが解説 読解力が伸びる! 親子で味わう俳句 第15回

学研の俳句おにいさんが解説 読解力が伸びる! 親子で味わう俳句 第15回

28歳の若さで学研の編集者と俳人、2つの顔をもつ中西亮太が、毎回オススメの季語と俳句を紹介していくこのコーナー。
今日の季語は「卒業・卒業式」。親にとっては、晴れがましい気持ちと、寂しい気持ちの入り混じった日です。

第15回 今日の季語「卒業・卒業式」(春)

卒業や見とれてしまふほどの雨

(そつぎょうや みとれてしまうほどのあめ)

櫂未知子(かいみちこ)

どんなふうに見とれていた?

今回の一句は、人間など気にもとめない無常な自然を描いているように思える作品です。作品の中の人は、雨にどんなことを思いながら見とれているのでしょうか? 書かれていない以上、想像するしかありませんし、絶対に正しい解釈というものはありません。このとき、「卒業」という季語が私たち読者にとってのてがかりとなります。


例えば、「卒業」を明るいイメージでとらえれば、卒業を祝ってくれるかのようにキラキラ光る雨に見とれる人を想像するでしょう。一方で、「卒業」を単なる学校の行事としてとらえれば、行事そっちのけで、純粋に自然の美しさに見入っている人を想像するでしょう。どこか思春期特有の青さが感じられる気がします。

読者一人ひとりが想像し、経験する「卒業」は違うので、作品の解釈にはズレや共感の差が出てくると思います。しかし、こうしたズレはある意味では当たり前のことで、一句をいろいろに楽しめる俳句の醍醐味(だいごみ)の一つと言えるかもしれません。

俳句のキーワード「句集」

句集とは俳句を集めた本のことで、ふつう一人の俳人の作品を集めたものをいいます。これまでこのコーナーで紹介してきたように、俳句は一句で一つの世界を描き出すことができます。この特徴を生かしながら、句集はもっと大きな世界、多様な世界を見せてくれます。

一句で表現される世界、十句で表現される世界、百句で表現される世界……。これらは、それぞれ違った面白さをもっています。句集を読むと、その俳人のテーマや考え方、スタンスが伝わってきます。

実は、今回紹介した句も、ある句集の中に収録されている俳句です。俳句は短い分、一句だけではどうしても想像しきれない部分があります。しかし、いくつもの俳句が並ぶ中での一句だとしたら、前後の作品と組み合わせることで、あるいはその句集全体を貫くテーマや雰囲気から、その句の想像を広げられることがあります。そして、時には、一句の感じ方が変わることもあるのです。

中西亮太の「学研の俳句おにいさんが解説 読解力が伸びる! 親子で味わう俳句」は、第1・第3水曜にお届けします! 次回もお楽しみに♪


中西亮太(なかにし りょうた)

1992年生まれ。株式会社学研プラスの編集者。大学生のとき、甘い考えでうかつに俳句をはじめる。過去に、第14回龍谷大学青春俳句大賞最優秀賞、NHK-Eテレ「俳句王国がゆく」出演など。「艀」(終刊)を経て、「円座」「秋草」現代俳句協会所属。俳句とは広く浅く長く付き合いたいと思っている。春の作品に〈春月の寝息に混じりゆくごとし〉。

マナビスタについて

マナビスタは学研グループの家庭学習応援サイトです。