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コラム・マンガ

学研の俳句おにいさんが解説 読解力が伸びる! 親子で味わう俳句 第24回(最終回)

学研の俳句おにいさんが解説 読解力が伸びる! 親子で味わう俳句 第24回(最終回)

28歳の若さで学研の編集者と俳人、2つの顔をもつ中西亮太が、毎回オススメの季語と俳句を紹介していくこのコーナー。
8月は葉月(はづき)とも呼ばれ、暑さが厳しくなる季節ですが、暦のうえでは8月8日に「立秋」を迎えて秋が始まります。

今日の季語「稲の花」(秋)

 

未来図は直線多し早稲の花

(みらいずは ちょくせんおおし わせのはな)

 鍵和田秞子(かぎわだゆうこ)

未来に向かって

言葉の意味をおさえながら、作品を読んでみましょう。「未来図」は将来を思い描いた設計図、「早稲(わせ)」は実りの早い稲の品種のことを指しています。

この句には、未来図が何の未来を示したものなのかは書かれていません。親しんだ街の都市設計図でしょうか? あるいは、自分自身の将来の未来予想図なのかもしれません。いずれにせよ、この未来図にはたくさんの直線が描かれているようで、どこか明るい印象があります。

季語「早稲の花」にも注目してみましょう。稲の花は、その年の米の収穫量を予想する手がかりになると言われています。農家は祈りながら、花の開花を待つそうです。そんなエピソードを知ると、稲の花は、未来への期待と不安を表現しているように感じられます。

これらをふまえると、この句は例えば、次のように読めるでしょうか。
未来への壮大な思いを胸に、緑でいっぱいになった田んぼにたたずんでいる。早稲を見てみると、豊穣の印である黄色い小さな花が咲き垂れているではないか。そのとき、強い風が吹きつける。風は稲をかき分けて進み、まっすぐな道を切り開いていった……。

ところで、この句の作者がのちに作った俳句結社の名前は『未来図』でした。希望に満ちた未来を想像させるこの作品は、作者にとって大切な一句だったのだと思います。

俳句のキーワード 「俳句甲子園」

松山城

野球には高校球児のための全国大会である「甲子園(通称)」がありますが、俳句には高校生俳人が競い合う「俳句甲子園」があります。1998年から始まった俳句甲子園ですが、正岡子規(まさおかしき)や高浜虚子(たかはまきょし)の出身地である愛媛県松山市で、毎年8月に全国大会が開催されています。

大会では、対戦するチームが1句ずつ出し合って、句の出来栄えとディベートで競います。俳句とディベートの総合でどちらが勝利したかは、審査員の旗上げによってリアルタイムで決定されます。

毎年お題が出され、2021年大会の決勝戦は「夜食」(秋)で競うことになっています。高校生たちが、お題をもとに作った膨大な句から選りすぐった句を披露して、ディベートで擁護・批判する姿は、さわやかで青春を感じられます。

現在、俳句甲子園は、平成・令和を代表する俳人を発見・輩出する役割も果たしています。歴代優勝校・最優秀句は、こちらからご覧いただけます。

連載終了のお知らせ

今回をもって、1年間担当させていただいた本連載を終了いたします。お読みくださったみなさん、ありがとうございました! 本連載を通して、一人でも俳句に興味をもってくださった方がいたなら、うれしく思います。


中西亮太(なかにし りょうた)

1992年生まれ。株式会社学研プラスの編集者。大学生のとき、甘い考えでうかつに俳句をはじめる。過去に、第14回龍谷大学青春俳句大賞最優秀賞、NHK-Eテレ「俳句王国がゆく」出演など。「艀」(終刊)を経て、「円座」「秋草」現代俳句協会所属。俳句とは広く浅く長く付き合いたいと思っている。秋の作品に〈伸びてゐる木賊(とくさ)と折れてゐる木賊〉。

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