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子育て

子どもたちの“今”を見つめる 第1回 「休み明けの登校しぶりはなぜ起こる?」

子どもたちの“今”を見つめる 第1回 「休み明けの登校しぶりはなぜ起こる?」

子どもたちの“今”を、様々な切り口から見つめる連載企画。夏休みが明けて数週間経ちましたが、新型コロナウイルスの影響で、学校もまだまだいつも通りとはいかない状況です。夏休み明けの子どもたちの心理状態、学校生活などをテーマに、東京学芸大学教授の松尾直博先生に取材しました。

夏休み明けの子どもたちの様子について、どのようなケースがあるか教えてください。

毎年夏休み明けは、環境の変化に弱い子や適応するのに時間がかかる子、長い休みで生活リズムがくずれている子などは、学校に行きたくなかったり、行っても元気が出なかったりします。逆に、休み明けでも気持ちを切り替えて、元気に登校できる子もいますね。

例年と比べて、子どもたちの様子に違いはあったのでしょうか。

夏休み明けは登校しぶり・不登校が増えるとよく言われますが、新型コロナウイルスの影響を受けた今年が、特別「学校に行きたくない子」が多かったかというと、そうでもないようです。例年のように登校をしぶる子どもも見られますが、休校期間ずっと家にいたこと、夏休みといってもいつものように遊びに行けないこともあり、「家にいてもつまらないから、学校に行きたい」という子どもも多くいたと聞きます。また「家にいるほうがつらいから、学校に行きたい」というケースもありました。

そもそもなぜ、子どもたちの中で登校意欲に違いが表れるのでしょうか。

理由はいくつかありますが、1つは「生まれつき」の違いです。これは年齢が上がるにつれ経験によってカバーしていきますが、年齢が低い子どもほど「生まれつき環境の変化に敏感かどうか」が影響します。

もう1つは、子どもたちが日々生活に対して感じている「楽しい」「つらい」などのバランスです。たとえば「学校生活」と「家庭生活」を天秤にかけたときに、学校のほうがつらいことが多くて不安定、家にいたほうが楽しくて安定する子にとっては、休み明けの登校は億劫に感じられます。

生まれつきの特性と、その子の認識として「学校生活」「家庭生活」がつらいかどうかが影響しているのですね。

子どもの特性や認識だけで片付けると「その子が感じやすいから」で終わってしまいます。子どもが「学校生活」=「つらい」と感じているのは、その子自身が環境の変化についていけないだけでなく、「友達が嫌なことを言ってくる」「先生がこわい」など、現実に何か問題が起こっているのかもしれません。子どもの状態を見つめつつ、その要因については子どもの外部で起こっていることも、あわせて確認する必要があります。

2017年告示の学習指導要領では、不登校の児童(生徒)への配慮として「個々の児童(生徒)の実態に応じた情報の提供その他の必要な支援を行う」といった内容が、新しく盛り込まれました。学習指導要領解説(総則編)にも、「不登校は,取り巻く環境によっては,どの児童生徒にも起こり得ることとして捉える必要がある」と明記されており、子どもの生活する環境に注目する必要性が述べられています。

第2回「コロナ禍で見えてきた、子どもたちが学校生活に求めること」に続く

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松尾直博(まつお なおひろ)

インタビュイー:松尾直博(まつお なおひろ)

東京学芸大学教授。1970年福岡県生まれ。1998年筑波大学大学院博士課程心理学研究科修了。博士(心理学)。1998年東京学芸大学教育学部助手。講師、准教授を経て2018年より現職。公認心理師、臨床心理士。学校心理士。特別支援教育士スーパーバイザー。主な編著として、『コアカリキュラムで学ぶ教育心理学』(培風館)、監修として『絵でよくわかる こころのなぜ』(学研プラス)などがある。

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