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教育情報

「探究学習」のプロが教える! 子どもが算数を好きになるコツ 第2回

「探究学習」のプロが教える! 子どもが算数を好きになるコツ 第2回

数や図形についての知識や、算数的なものの見方・考え方を身につけることは、日常生活を送ったり、社会に出て仕事をしたりするうえで、欠かすことができません。

しかし、子どもによっては、算数に苦手意識をもち、学年が上がるにつれて勉強する意欲がどんどん失われてしまうこともあります。

前回に引き続き、算数をテーマにした学習プログラムを多数開発している、探究学習塾「エイスクール」の代表・岩田拓真さんに、子どもが算数を好きになるためのコツについて伺いました。

 

その子のレベルに合わせて、少しずつレベルを上げていくことが大切

―前回、算数が苦手な子どもへの教え方の注意点などを伺いましたが、算数が好きな子ども・得意な子どもの興味関心をより伸ばすためのポイントやコツについても伺いたいです。

算数が好き・算数が得意な子どもは、「もっと難しい問題が解きたい!」「もっとおもしろい問題に取り組みたい!」というように、目に見えてわかりやすく、自発的に学ぶ意欲があります。

でも、最初からレベルが高すぎるものを与えてしまうと、かえって学習意欲や興味を損ねてしまう可能性があるので、レベルごとに分かれている問題やドリル、パズルなどを探してきて、その子のレベルに合わせて少しずつ問題のレベルを上げていくことが大切です。

また、普段学校で習っている算数が日常生活の中で役に立っているという、“算数の新しい側面”を見せてあげることも、興味関心をより伸ばすために効果的だと思います。

 

―エイスクールの塾では「おしごと」をテーマとして算数を学ぶプログラムがあり、 “算数の新しい側面”を見せるということを実践されていますね。

学校の授業で習う算数以外にも、例えば「算数と社会」「算数と自然」といったように、算数はもっと広くいろいろなものに繋がっているよ!ということを子どもたちに伝えたいと思ったのですが、それが具体的にわかりやすく伝わり、ワクワクしながら体感できるものとして「おしごと」を選びました。

また、普段、図形が苦手な子どもも、例えば「ロゴデザイナー」のワークでは、とても楽しそうに、図形と触れあったり、図形を使ってオリジナルのロゴマークを作ったりします。
こんなふうに興味をもって取り組めることも「おしごと」を選んだ理由の1つでもあります。

 

―確かに、「おしごと」には算数の広がりを感じますね。ちなみに、「算数と自然」の例にはどのようなものがありますか。

「算数と自然」の例としては、蜂の巣の形が正六角形であることや、「ロマネスコ(※)」という野菜は、部分に小さく分解しても、大きい時の元の形に似るという構造をしていること、などが挙げられます。

このように、実は日常生活において算数と自然が結びついている場面は多く、算数は算数、自然は自然と分かれているわけではありません。

学校で習う内容についても、「算数は算数」「理科は理科」といったように教科ごとに分けるのではなく、教科の垣根を越えて「算数」や「理科」の範囲を広げてあげることで、子ども自身が新しい見方を発見したり、おもしろさを見出したりすることができると思っています。

※ロマネスコ…アブラナ科アブラナ属の植物。ブロッコリーの仲間。

 

算数の答えやアプローチの方法は1つとは限らない

―エイスクールの塾で、子ども自身が楽しみながら算数に取り組める理由の1つとして、“探究的な要素”が挙げられると思います。どのように探究的な要素を取り入れているのか教えてください。

「算数は、答えや解き方が1つである」と捉えられている方も多いと思いますが、実は、答えが1つでもそこにたどり着くまでの解き方が1つではなく、複数存在するものもあります。

また、「この図形がどのような場所に使われていますか?」などの問いのように、答えが1つに決まらないものもあります。

大人になって算数を利用するときは、答えやアプローチが複数考えられる場面であることが多いですよね。

しかし、小中学生の学校での授業では、「答えも考え方もこれが一番正しい」という前提で算数や数学を学ぶことが多く、実際に算数や数学を使って様々な答えやアプローチを考えてみるということが少ないと感じています。

そのため、エイスクールの塾では、算数の答えやアプローチは1つではないという点を、“探究的な要素”として取り入れた算数を通して体感してもらうことを実践しています。

 

―“探究的な要素”が加わることで、算数が苦手な子どもはより苦手意識を感じやすくなることはないのでしょうか。

探究的な学びが苦手だと感じる子どもはいますが、算数が得意だから探究的な学びも得意かというと、必ずしもそういうわけではありません。

決まった型で算数の問題を解くことは得意でも、算数を工夫して使うという場面では、時間がかかってしまう子どももいます。

反対に、普段算数が苦手な子どもでも、探究的な学びの場面では、苦手だからこそ決まった算数の考え方にとらわれず、柔軟に考えることができる場合もあります

必ずしも「算数が苦手だから、探究的な学びも苦手」とは限らず、探究的な学びを継続的に行うことで、どんな子どもでもだんだんできるようになると実感しています。

 

算数遊び——嫌にならない程度に、一緒に楽しく、遊び感覚で取り組む

―前回、数の概念を具体的にイメージしやすくするコツとして、“日常生活の中で自然に会話に盛り込む”ということを教えていただきました。今回は、家庭で子どもと一緒に取り組める「算数遊び」のようなものがあれば教えていただきたいです。

例えば、
・ピッタリの金額を狙って買い物する。
・車のナンバープレートの数字を四則演算(たす、ひく、かける、わる)で計算して10を作る。
・ピッタリ〇キログラムのものを探す。
・〇倍の長さや重さのものを探す。
など、日常生活の中で数字と触れ合うことができる遊びはたくさんあります。

また、数や計算を題材にしたカードゲームやボードゲームは、大人も子どもも一緒に楽しみながら取り組むことができるのでおすすめです。

ご家庭で「算数遊び」を行うときのポイントとしては、子どもが嫌にならない程度に、一緒に楽しく、遊びだと思える範囲で行うことだと思います。

 

 

 

算数の認知・興味を深めるための、おすすめの書籍

■おしごと算数ドリル(エイスクール・著/学研プラス)

「コンビニ経営」や「ロゴマークデザイン」などの「おしごと」の場面の中で算数を使うことで、実践的な算数の見方や考え方を楽しみながら学ぶことができます。実際の「おしごと」でも直面するような、答えが1つではない問題も掲載されているので、子どもたちは自ら試行錯誤しながら「探究的」に学ぶことができます。
エイスクールの塾で人気の学習プログラム『おしごと算数🄬』を、小学生向けのドリルに書籍化したシリーズです。

●「おしごと算数ドリル」書籍詳細
おしごと算数ドリル ビジネス×計算
https://hon.gakken.jp/book/1130552700
おしごと算数ドリル デザイン×図形
https://hon.gakken.jp/book/1130552600

 

■「勉強しなさい」より「一緒にゲームしない?」(岩田拓真・著/主婦と生活社)

国語、算数、理科、社会、英語、プログラミング、総合学習といった教科の幅を超えて、思考力や判断力、表現力、学びに向かう姿勢や意欲の向上につながる最先端の授業プログラムを、おうちで体験できる「学びのゲーム30」を紹介。子どもの「夢中」がさまざまな将来の可能性につながっていく過程を、おうちで上手にサポートするための方法が満載です。

Information

インタビューを受けた人: 
エイスクール 代表・岩田拓真

幼児〜高校生に向けた探究学習塾エイスクールを運営。子どもが夢中になって学べるさまざまな学習プログラムをオリジナルで開発しており、2019年に『おしごと算数🄬』『なりきりラボ🄬』でグッドデザイン賞を受賞。京都大学総合人間学部卒、東京大学大学院工学系研究科修了(工学修士)。Boston Consulting Groupで経営コンサルタントとして勤務した後、エイスクールを創業。一児の父。

※「おしごと算数」「なりきりラボ」は、株式会社a.schoolの登録商標です。

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