子どもの痛みに寄り添う~体の痛み、心の痛み(前編)
あかはなそえじ先生の院内学級の教師として学んだこと「第15回」
院内学級の教師として、赤鼻のピエロとして関わるなかで、笑顔を取り戻し、治療に向かう意欲を高めていく子どもたち。その経験をもとに、子どもとの接し方や保護者・家族との関わり方、院内学級の必要性、教育の重要性などについて語ってくれます。
~「こころ」が泣いてる~
「好きな遊びができていいな」
小学校2年生の男の子が私に伝えてくれました。
病室に行ってみると、ベッドの上でゲームをやっている子どもたちの姿がとても多く見られます。集中して、周りをすべてシャットアウトするかのように。
私が関わっている“いのちの授業”などで訪れた先の子どもたちからは、「学校を休んで、ゲームすることができて、いいなぁ」と言われました。
ベッドの上の子どもたちが苦手にしていること、その一つが「ひま」です。子どもたちは、時間がたっぷりあることが大キライ。
なぜ、たっぷり時間があることがキライなのか。それはたっぷり時間があると、いろいろなことを考えてしまうからです。学校のこと、友だちたちのこと、勉強のこと、イベントや行事のこと、家族のこと、きょうだいのこと、体のこと、将来のこと。そんなことばかりを考えて、心の痛みを味わいたくないのです。
もちろん、体の痛みも同じです。頭が痛い、おなかが痛い、手術の跡(あと)が痛い。そんな体の痛みを感じたくないので、ゲームの世界に集中します。
ゲームだけではなく、マンガをひたすら読んでいる子、小さいお子さんは、ぬり絵や折り紙をやり続けます。ただし、ゲームやマンガ、ぬり絵や折り紙をやっている子どもたちは、決してそれらを本当に楽しんでいるわけではないのだと思います。
~少しでも楽になってほしいから~
「退院できると思ったのに」
そんな詩を5年生の男の子が書いてくれました。
──退院できると思ったのに CRR(炎症(えんしょう)反応値)があがってさ
退院できなくなった すっごいいやな気持ちになる やな気持ちになるとあつくなる
早く退院したい 退院して 学校に行きたい──
子どもたちは、1日でも早く退院をしたいと、必死になって治療(ちりょう)に向かいます。でも、自分が考えていたような回復に向かうわけではありません。そんなときの子どもたちの悲しみは、とても大きなものがあります。
医療(いりょう)関係者も、子どもたちにそのような気持ちを味わわせたくないので、なかなか退院の見通しを伝えてくれません。そのことは、子どもたちの病気を治すモチベーションに大きく影響するため、相談をしながらやっています。
そんなときの心の痛みに、どのように対応していけばいいのでしょう。
楽しみにしていた退院が延びたとき、子どもたちはだれにも当たることができません。そんないかりや悲しみ、願いや思いを、院内学級や病室で学習をしながら、遊びながら聞いて、好きなことに取り組んでもらうことで、軽減していきます。
軽減、解消していく時間は、子どもたちそれぞれちがうので、一人ひとりに合わせた関わりを工夫していました。
次回はそちらについてお話したいと思います。
Information
「あかはなそえじ先生のひとりじゃないよ」
四六判・全248ページ
1400円+税
学研教育みらい刊