失敗はチャンスだ!(前編)
あかはなそえじ先生の院内学級の教師として学んだこと「第18回」
院内学級の教師として、赤鼻のピエロとして関わるなかで、笑顔を取り戻し、治療に向かう意欲を高めていく子どもたち。その経験をもとに、子どもとの接し方や保護者・家族との関わり方、院内学級の必要性、教育の重要性などについて語ってくれます。
~「だいじょうぶ、さいかち学級(院内学級)に失敗はないんだよ」~
当時、低学年の女の子が発した言葉です。ある日、学習をしているときに、高学年の男の子が問題を解くことができずイライラしていました。何度かチャレンジしてみたのですが、正解にたどりつけません。「もういいよ、どうせできない」という気持ちになったとき、女の子が、男の子に向かって言った言葉でした。
病気やけがをした子どもたちは、病気やけが、入院したことを、とても大きな失敗だと思っています。この病気をしたから、こんなけがをしたから、入院をしてしまったから、自分はだめなのだと思ってしまう子が多いのです。
再入院したときなどは、「また失敗をくり返してしまった」と、自分に対するネガティブな感情をさらに大きくしてしまう様子が見られました。そこまで言わなくてもと言いたくなるほど、多くのネガティブな言葉で自分を表現する子もいました。
だからこそ、院内学級では
「失敗はチャンスだ!」
と思ってもらえるかかわりをしていこうと考え、学習や遊びをとおして、
「失敗をしてもまたやり直せばよいこと」、
「うまくいかなくてもそのようなときもあること」、
「失敗から多くを学べること」
を子どもたちに伝えていきたいと思ったのです。
~「大人の失敗」を見せるかかわり~
そのころ、学校の先生方と話をしていて感じていたことがあります。
失敗をしたり、負けたりすることを、受け入れることが苦手な子どもたちが増えているのではないか、ということです。「負けずぎらい」というレベルではなく、間ちがえたことでパニックになったり、負けたことで相手や自分を傷つけたりする、そのような子どもたちの姿も見られました。
「失敗する自分はだめだ」、「失敗する自分が許せない」、だから、「失敗しそうなことには絶対に近づきたくない」。「負ける自分はだめ」、「負ける自分が許せない」だから、「勝てないことや自分を負かすような相手の存在を認めたくない」。
失敗体験の思い出ばかりが大きくなっている子どもたちの多くは、これ以上、くり返したくはないのでしょう。何度も、「自分はダメだ」、「自分の力ではどうしようもないのだ」、ということに何度も当たったら、そうなってしまうのかもしれません。
しかし、失敗や負け、できないことやわからないこと、うまくいかないことは、これから先、大人になっても何度も経験することです。
この失敗を、お子さん自身の経験の中に取り組むには、成功体験を積み重ねていくことでポジティブな自己認知を持たせていくことが大切です。そのためには、学習や活動を通して、ポジティブな自己認知をもってくれるように、子どもたちとのかかわり方を考えていくのです。
さまざまなかかわりと書きましたが、かかわりの中で、いちばん簡単で、いちばん大切なこと、それは「大人が子どものモデルになること」です。子どもたちは大人が失敗をする姿が見たいのです。大人の鼻を明かしたい(大人をびっくりさせたい)子どもが多いのです。
続きはまた次回に。
Information
「あかはなそえじ先生のひとりじゃないよ」
四六判・全248ページ
1400円+税
学研教育みらい刊