病気による困難を抱えた子どもたち
あかはなそえじ先生の院内学級の教師として学んだこと「第24回」
院内学級の教師として、赤鼻のピエロとして関わるなかで、笑顔を取り戻し、治療に向かう意欲を高めていく子どもたち。その経験をもとに、子どもとの接し方や保護者・家族との関わり方、院内学級の必要性、教育の重要性などについて語ってくれます。
~「病気をかかえた子どもたち」と「病気による困難をかかえた子どもたち」~
むかし、ある病院のドクターから「ホスピスで子どもたちに会っていただき、クラウンとして子どもたちとのかかわりをお願いしたいのです」という連絡がありました。
当日、私は「よっしゃ!」とばかりにはりきって病院に行き、着がえとメイクをすませてドクターといっしょに病院に向かいました。向かうとちゅうで「子どもたちに気をつけなければならないことを確認させてください」と告げました。なぜなら、点滴(てんてき)をしていたり、無菌室(むきんしつ)に入っていたり、体調が変化しやすかったり、そのようなお子さんたちと過ごすと思っていたからです。するとドクターが言いました。「ああ、だいじょうぶです。子どもたちはみんな、元気ですから」と。「えっ、みんな、元気なのですか?」……私はいっしゅん???となりました。
そうなのです。ホスピスに入院していたのは子どもたちではなく、保護者やきょうだいだったのです。大切な人が入院している、そんな子どもたちにかかわってほしいというオーダーでした。このとき、自分自身ではなく、家族やきょうだい、友だち、親類のだれかが重い病気により入院されている子どもたちがいることを、あらためて認識しました。
この日は、私のクラウンとしてのパフォーマンスを楽しんでもらい、チャイルド・ライフ・スペシャリスト(CLS)の方々の協力を得て、家の方といっしょに大切な物を入れる宝物入れなどを作って過ごしました。いろいろな形で表現するお子さんたちを見ながら、「人の病気によって、苦しみやしんどさをかかえている子どもたちがいる」ということを考えさせられました。
~病気をかかえるのはひとりじゃない~
小学校低学年のお子さんがいました。その子のきょうだいが重い病気にかかって、入院しなければならなくなり、お母さんがつきっきりで看病をすることになりました。その子は、こんなときに周りにめいわくをかけてはいけないと、言いつけを守り、いっしょうけんめいに家の手伝いをしながら、学校と病院に通いました。笑顔いっぱいで。
しかしあるとき、お母さんから「朝、学校に行くのをぐずったり、いやがったりして、とても時間がかかるようになりました」「学校に行っても保健室で過ごす時間が増えているそうです」という知らせをもらい、その後、とうとうその子のエネルギーが切れて、家から出ることさえできなくなってしまいました。
田舎からおばあさんに来てもらったり、登校できたときには保健室でゆったり過ごしたり。エネルギーをためてもらうことを、いろいろな関係者と協力して考え、行った結果、時間はかかりましたが、その子は少しずつエネルギーを取りもどすことができました。
この子のように、きょうだいが病気になることは、とっても大きな出来事なのです。病気の当人はもちろんですが、元気なほかのきょうだいも多くのがまんや心配をかかえます。以前は、病院の夜の待合室でコンビニのお弁当やおにぎりを食べながら、宿題をしているきょうだいもいました。小児科のエリアは感染などの対策から、子どもは保護者といっしょに入れないところが多く、それどころか現在は、新型コロナウイルス感染対策のおかげで、大人でも病院内に入れないため、家族のおみまいにも行けません。
残されたお子さんは、病状を心配しながら家に帰り、翌日、いつものように学校の教室で勉強をしなければなりません。このような「病気による困難をかかえた子どもたち」も多くいるということを、忘れないようにとちかった昔のお話でした。
次回タイトルは「スペシャルなえこひいき」。不登校の子どもたちだからこそできる、周囲の大人や家族のかかわりをお伝えします。
前回記事
「教育だからできること(前編)」はこちら。
「教育だからできること(後編)」はこちら。
Information
「あかはなそえじ先生のひとりじゃないよ」
四六判・全248ページ
1400円+税
学研教育みらい刊