クラウン(道化師)と出会って・前編
あかはなそえじ先生の院内学級の教師として学んだこと「第26回」
院内学級の教師として、赤鼻のピエロとしてかかわるなかで、笑顔を取り戻し、治療に向かう意欲を高めていく子どもたち。その経験をもとに、子どもとの接し方や保護者・家族とのかかわり方、院内学級の必要性、教育の重要性などについて語ってくれます。
~「クラウン」ってなあに~
「クラウン」とは道化師のことです。赤鼻、といえばイメージがつかめるでしょうか。
日本では「ピエロ」という呼び方のほうがなじみがあるでしょう。サーカスクラウン、ステージクラウンなど、いろいろなクラウンたちがいます。
そのなかで、病院で出会うクラウンたちがいます。クリニクラウン、ケアリングクラウン、ホスピタルクラウン。呼び方は、そのクラウンたちが所属している協会などによって様々ですが、病院や家で病気をかかえた子どもたちに、会いに来てくれるクラウンたちのことです。国によっては、最後の看取りに立ち会うクラウンもいます。
私が赤鼻を付け始めたのは、俳優ロビン・ウイリアムズが主演した映画『パッチ・アダムス トゥルー・ストーリー』という作品を観たことがきっかけでした。ストーリー自体ももちろんですが、パッチ・アダムスことハンター・キャンベル・アダムス氏が実在するということに衝撃を受けました。
その後、私はパッチに会いたい、会える機会はないだろうかと考え、いろいろ探してみたところ、日本で講演を行う情報を見つけることができ、そして会いに行ったのです。直接、お話をすることはできませんでしたが、パッチの姿やお話からエネルギーをもらえました。
このときに、赤鼻を手に入れ、院内学級で赤鼻を付けようと思いました。映画やクラウンの映像を何度も観て、動きやかっこうを学びましたが、初めて教室で赤鼻を付けたときの子どもたちの反応は「??」でした。
~「Clown! and Teacher! You are the Great Teacher !」~
これは、クラウンになるのは難しいと思っていたとき、私を救ってくれた言葉です。たまたま院内学級の参観に来てくれた東南アジアの国々の留学生たちの言葉でした。
クラウンのステイタスは国によって異なります。留学生たちの国々でクラウンは「あこがれの存在だ」と言われました。この話を聞いて、私はぜひとも「クラウン」の勉強をしたい気持ちが高まり、有名なクラウンK(大東耕介さん)に教えを受けに行ったのです。それが「ホスピタルクラウン」でした。名古屋のクラウン集団「プレジャーB」の方々にイチから教えていただき、病院での研修も行わせてもらいました。
ちょうどそのころ、なんとパッチ・アダムス氏が再度、来日するという情報が入り、関東で病院や老人ホーム、養護施設(しせつ)を回るツアーを行うことがわかりました。私はもちろん、すぐに申し込みをしたのですが、じつはこのころ、私は「教師」と「クラウン」という職業を、自分の中で天秤(てんびん)にかけていたのです。
実際にパッチ・アダムス氏にお会いして、いっしょに活動をさせていただきました。このときにたくさんの学びがありました。
その学びの一つが「パッチは赤鼻を付けたクラウンで、道化をしているが、立ち位置はドクターである」ということでした。ドクターでありながらクラウンを演じているパッチに接して、教師とクラウンを天秤(てんびん)にかけていた私が、自分の中で「私は教師である」という立ち位置を確信することができたのでした。
次回「クラウン(道化師)と出会って・後編」ではパッチ・アダムス氏から学んだ「異文化でもわかりあえること」についてお伝えします。
前回記事
第25回「スペシャルなえこひいき~不登校だからできること~」はこちら。
Information
「あかはなそえじ先生のひとりじゃないよ」
四六判・全248ページ
1400円+税
学研教育みらい刊