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コラム・マンガ

チームになる~病院通いの子どもを支援する~ ・後編

チームになる~病院通いの子どもを支援する~ ・後編

あかはなそえじ先生の院内学級の教師として学んだこと「第29回」

院内学級の教師として、赤鼻のピエロとしてかかわるなかで、笑顔を取り戻し、治療に向かう意欲を高めていく子どもたち。その経験をもとに、子どもとの接し方や保護者・家族とのかかわり方、院内学級の必要性、教育の重要性などについて語ってくれます。

~「真ん中に置くのは……」~

「病気で入院しているお子さんにとって、よりよい形をつくっていくためには、かかわる人たちがそれぞれ専門性を尊重してつながる必要があります。そのときにこそ“子どもを真ん中に置く”という立ち位置が、とても大切であると感じています」。
10年ほど前、私はこの立ち位置が、お子さんへのかかわりを大きく前進させる有効な手段であったと思っていました。

病室のベッドの上にいるお子さんは、良い子であることを求められます。病気を治すためには、お子さんの生活や成長、発達の連続性とは無関係に行われます。もちろん、病気を治すことを進めていく上でそれは大切なことです。

病院スタッフは常に最適な病気を治す方法を考えています。お子さんが小さければ小さいほど、また病気の状態が重ければ重いほど、そこには病気をもつお子さんたちの判断や考えが入る余地はありません。

保護者の中には「うちの子どもには病名や病気の内容を伝えないでください」と言う方もいらっしゃいます。ですが、大人でも、目標や今後の見通しがもてないことをがんばっていくのは、とても難しいことです。子どもたちも同じです。

「いったい、これ以上、どうがんばれっていうのよ」「私、これからどうなるのかわからないんでしょ」──こんな子どもたちの声も聞きました。

インフォームド・コンセントの広がりによって、だんだんと、子どもたちにも病気を治す方針の説明が行われるようになりました。そのお子さんの発達や理解に応じて説明が行われ、納得した上で進めていくということです。病気の子どもたちのことを、周りの大人たちはとても大切に考えます。そして、そこで話し合われたことを子どもたちにしっかりと伝えます。

「このように病気を治していきますよ」「いいですね」「わかりましたか?」という声に、子どもたちは「はい、わかりました」とうなずきます。そして進めていきます。それが当たり前のことだと受け入れています。それでも、子どもたちから聞こえてくる声があります。

~「私のことを勝手に決めないでほしい」~

そうなのです。その後、2年間、お子さんたちとのかかわりを通して考えていたこと、行っていたことは、少しちがっていたのかもしれないと思うようになったのです。

「真ん中に置くのは子どもではない」
そうです。子どもの位置はチームの一員。真ん中に置くのは「子ども」ではなく、子どもたちがかかえている「困難」や「課題」なのではないのかと考えました。

もちろん、自分の病名やその内容などを聞きたくない子どもたちもいます。チームの一員なのだからと、無理やり聞かせることはまちがっています。話し合いの中に、お子さんがどの程度参加するのか、お子さんに対する気づかいはとても大切なことです。

「困難」や「課題」を真ん中に置いて、当事者であるお子さんたちも一員であるチームを、これからもつくっていければいいなあと思います。

前回記事
第26回はこちら。

Information

「あかはなそえじ先生のひとりじゃないよ」
四六判・全248ページ
1400円+税
学研教育みらい刊

あかはなそえじ先生・副島賢和(そえじま まさかず)

筆者:あかはなそえじ先生・副島賢和(そえじま まさかず)

昭和大学大学院保健医療学研究科准教授、昭和大学附属病院内学級担当 1966年、福岡県生まれ。東京都の公立小学校教諭を25年間務め、 1999年に都の派遣研修で東京学芸大学大学院にて心理学を学ぶ。 2006年より品川区立清水台小学校教諭・昭和大学病院内さいかち学級担任。2009年ドラマ『赤鼻のセンセイ』(日本テレビ)のモチーフとなる。2011年『プロフェッショナル 仕事の流儀「涙も笑いも、力になる」』(NHK総合)出演。2014年より現職。学校心理士スーパーバイザー。ホスピタルクラウンとしても活動中。

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