ひとりじゃないよ~子どもが安心するには?~・前編
あかはなそえじ先生の院内学級の教師として学んだこと「第30回」
院内学級の教師として、赤鼻のピエロとしてかかわるなかで、笑顔を取り戻し、治療に向かう意欲を高めていく子どもたち。その経験をもとに、子どもとの接し方や保護者・家族とのかかわり方、院内学級の必要性、教育の重要性などについて語ってくれます。
~子どもが「大切にされている」と感じるかかわり~
みなさんは、相手からどのようなかかりをされたときに「自分は大切にされている」と感じますか? 教員研修、保護者の会、病院スタッフとの話し合い、会社の研修会などで、「相手を大切にするかかわり」についてお話をする機会がよくあります。このテーマは、決して院内学級や子どもたちだけの問題ではないのですが、子どもたちの声やメッセージなどを取り上げながら「相手を大切にしていきたいですね」と伝えると、「具体的にどのようにすればいいのでしょうか?」と質問をいただいたことがありました。
これは本当に難しい問題ですね。こちらが、どれだけ「あなたが大切です」とかかわっていっても、相手が大切にしてもらっていると感じなければ、相手を大切にするかかわりとはいえないからです。「相手を大切にするかかわり」とは、実は「相手が大切にされていると感じるかかわり」なのかもしれません。
私が院内学級の担任だった当時、「相手を大切にするかかわり」は「自分はひとりじゃないよと思ってもらえるかかわり」をすることでした。「すぐとなりにいること」「受け止めること」。具体的には「相手のメッセージをしっかり受け止める」「相手の話を聞く」ことです。本人はもちろん、相手の考えや気持ち、さらには持ち物なども大切にあつかうことだと考えました。
「話を聞く」ということは難しいことだと思います。「傾聴(けいちょう)」というトレーニングがあるように、聞き方を学ぶ必要があるのかもしれません。
「そうですね」というソーシャル・スキル教育における、話の聞き方の学習があります。子どもたちに行うのはもちろんですが、その体験を研修会や保護者会でもしていただきました。その学習で「感じてもらうこと」の一つに「話を聞いてもらう心地よさ」があります。話を聞くのは内容ももちろんですが、そのときの感情や心持ちを聞くことも大切なのです。
~「事実」だけではなく「感情」や「気持ち」も聞いてあげよう~
ある小学校低学年のお子さんは、発達に少々問題があるといわれていました。院内学級の教室に来たときに、私に点滴(てんてき)の針のあとを見せながら「チクンしたの」と伝えてくれました。そこでまず、優しく手を取って「痛かったねぇ」と伝えたところ、ちょっと涙目になって「うん」と答えてくれました。そして「がんばったねぇ」と伝えると、笑顔になって机にもどり、学習に入ってくれました。
「針をさされた」ということのほかに「痛かったこと」「がんばったこと」も、だれかに聞いてほしかったのですね。このとき、こちら側が「針をさされたんだね、治療だから針をさすのは仕方ないことだよ。注射のあとをどこかにぶつけないようにね」と、事実にだけ反応していたとしたら、お子さんののちの行動はまたちがっていたのかもしれません。
話を聞いてもらえる、感情を受け取ってもらえるという感覚は、「自分のことを大切に思ってもらっている」ということにつながっているようです。
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Information
「あかはなそえじ先生のひとりじゃないよ」
四六判・全248ページ
1400円+税
学研教育みらい刊