Now Loading...

コラム・マンガ

病気の子どもをもった保護者を支える

病気の子どもをもった保護者を支える

あかはなそえじ先生の院内学級の教師として学んだこと「第33回」

院内学級の教師として、赤鼻のピエロとしてかかわるなかで、笑顔を取り戻し、治療に向かう意欲を高めていく子どもたち。その経験をもとに、子どもとの接し方や保護者・家族とのかかわり方、院内学級の必要性、教育の重要性などについて語ってくれます。

~お父さんお母さんの笑顔が一番の薬です~

教員時代、家族を支えることが子どもたちの発達の保障に大切だと感じ、教師仲間に、家族のサポートも教師の仕事だという話をしたことがあります。「そうだね」とみんなで共有できたのですが、「子どもたちだけでも大変なのに、大人のことまで」という意見もありました。

教師の仕事の優先順位が、目の前の子どもたちであることは事実で、子どもたちが学校にいる間に勝負をしなければならないと思っていました。
子どもたちとの関係が良好であるから、保護者との関係も良好になるのだと思います。それでも、保護者の方たちと話をすると、とてもなやんでいたり、困っていたり、相談をする人がいないなど、さびしい思いをしていたりする保護者の方が多かったようです。

学校での子どもたちの様子は、保護者の方の状態に、大きく左右していることを感じました。
それは当然のことだと思います。子どもたちは、保護者の方の笑顔が大好きです。ベッドの上にいる子どもたちも、家の人が笑っていると、とてもうれしそうな表情をみせます。だからこそ、保護者と同じチームになる必要性があるのだと考えました。

~お父さんもつらかったんだね~

院内学級「さいかち学級」は、放課後、喫茶室(きっさしつ)「さいかち」になります。コーヒーや紅茶を用意して待っていると、ドクターやナース、心理士、保育士のほか、保護者の方々も来られて、短い時間ですがいろいろな話をしました。

その日は、入院をしている子どものお父さんが来られました。仕事バリバリで背筋がしゃんとのびているお父さん。お母さんやお子さんから「いそがしそうで何も相談できない」「ちょっとこわい」という話を聞いていたお父さんでした。話をしていくなか、お父さんが「この先、どうなってしまうのでしょう」と、ぽろぽろ大つぶのなみだを流しました。お子さんの状態や家族のこと、たくさんのことをかかえていらっしゃるのだと感じました。

別のお父さんには「子どもが手術をするので休ませてほしいと伝えても、一度ぐらいならいいけど、何度ともなるといい顔されない」と言われました。また、「転勤の指令を子どもの事情で断ると、じゃあ別の人でとなるわけだけど、そうやって仕事がなくなるのは困るので、とても難しい。それに、こんな話は家族に話しづらい」というお父さんもいました。

お父さん、お母さん、保護者の方も、たくさんのがまんをしています。仕事が終わって面会に急いで行き、お子さんの前ではつかれも出せず、平静を装います。お子さんが病気になったのは、どこかで自分のせいなのでは、と思われている方も多くいました。子どもたちはもちろんですが、保護者の方も傷ついているのです。

医学の進歩は目覚ましく、お子さんを亡くすという体験をされる方は、40、50年ほど前に比べると、とても少なくはなっています。ですが、一方で、お子さんを亡くされた方の「さびしさ」は、より大きくなったのではないかと感じます。悲しみや、つらさ、体験を共有できる人が身近にいないということもあるでしょう。

大切ないのちをなくしてしまったという体験を共感、共有することは、これまでもこれからも、私にとっての大きな課題です。簡単に「わかります」「そうですね」とは言えませんが、それでも保護者を支え、つながりをつくっていくことが、病気をかかえた子どもたちとかかわらせていただけた、私たち教師の役目なのではないかと思うのです。

前回記事
第32回はこちら。

Information

「あかはなそえじ先生のひとりじゃないよ」
四六判・全248ページ
1400円+税
学研教育みらい刊

あかはなそえじ先生・副島賢和(そえじま まさかず)

筆者:あかはなそえじ先生・副島賢和(そえじま まさかず)

昭和大学大学院保健医療学研究科准教授、昭和大学附属病院内学級担当 1966年、福岡県生まれ。東京都の公立小学校教諭を25年間務め、 1999年に都の派遣研修で東京学芸大学大学院にて心理学を学ぶ。 2006年より品川区立清水台小学校教諭・昭和大学病院内さいかち学級担任。2009年ドラマ『赤鼻のセンセイ』(日本テレビ)のモチーフとなる。2011年『プロフェッショナル 仕事の流儀「涙も笑いも、力になる」』(NHK総合)出演。2014年より現職。学校心理士スーパーバイザー。ホスピタルクラウンとしても活動中。

マナビスタについて

マナビスタは学研グループの家庭学習応援サイトです。