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コラム・マンガ

通院する子どもに必要なかかわりとは?~ぼくのことが本当に大切なら~

通院する子どもに必要なかかわりとは?~ぼくのことが本当に大切なら~

あかはなそえじ先生の院内学級の教師として学んだこと「第36回」

院内学級の教師として、赤鼻のピエロとしてかかわるなかで、笑顔を取り戻し、治療に向かう意欲を高めていく子どもたち。その経験をもとに、子どもとの接し方や保護者・家族とのかかわり方、院内学級の必要性、教育の重要性などについて語ってくれます。

~男の子、心の叫び~

今から5、6年前、院内学級に来ていた中学生の男の子と、ナースセンターのかべに寄りかかりながら、ある光景を見ていました。 

病棟にはプレイルームという場所があり、病室から出てもいい許可をもらえた子どもたちが、そこで食事をしたり、みんなで遊んだりできる場所です。 

中学生の男の子の視線の先のプレイルームに、小学生の男の子と担任の先生がいました。担任の先生がおみまいに来てくれたのでしょう。クラスの友だちが書いてくれた寄せ書きや宿題のプリントを見ながら楽しそうに会話をしている光景でした。 

中学生の男の子はふだんから「おみまいになんて来なくていいよ」と言っていたお子さんでした。ただ、そのときの男の子の表情がとてもさびしそうだったので、単刀直入に「さびしい?」と聞いてみました 

すると男の子が「別に、さびしいというわけじゃないけどね。ぼくのことを大切だと思うなら、今、ぼくがどんな状況なのか見に来いよ」と言い放ったのです。 

 ~病院にいる子どもと学校をつなぐ教師のなやみ

教師にとって、病院はやはり訪問するハードルが高いのかもしれません。
もともと小児科は、おみまいに来るにも保護者の許可がなければ来られませんし、面会時間に制限がある病院も多くありました。
<現在はコロナウイルス対策で、小児科だけでなくすべての病院が面会禁止ですが、この話はあらためて> 

教師は日々の職務がとてもいそがしいうえ目の前の子どもたちのことで精いっぱい。
そんな中、入院期間も短くなっており、おみまいに行ったら退院していたという経験をされた先生方も多くいるかもしれません。が、入院している子どもたちから考えると、おまみいに来てくれる担任や先生は実際に少なく、入院しているお子さんの数の1割程度くらいのものです。 

欠席の理由が「病気」となると、担任とのきょりが少し空くのかもしれません。 長期欠席の児童を考えてみるとわかりやすいかと思います。
不登校状態にあるお子さんがクラスにいる場合、担任は家に電話をかけたり、家庭訪問に行ったり、たくさんのコンタクトを取ります特に不登校の理由がわからない場合、直接、お子さんや保護者の方と会って話ができるようにがんばります。 

しかし、欠席の理由が「病気」の場合、担任としてはちょっとホッとするのです。
ホッとして、こう言います。「病気なら仕方ないですね。ゆっくり休んで1日も早く治しましょう。みんなで待っているからね」と。私も現場で教師をしているときは、そうでしたから、その心持ちは十分にわかります。 

──だって病気ですから、仕方ないですね。早く治して再登校してもらいたい── 

これは、教師にとってウソのない本当の気持ちです。 でも、子どもたちにとって、学校からはなれてしまう不安はとても大きいものがあり、それは理由がなんであろうと同じものです。

教師がいそがしいのであれば、病院関係者や保護者の方ができるサポートがあるかもしれません。教師、病院関係者、保護者の方がチームになって、子どもが「学校とのつながり」を感じられるメッセージを伝え続けてほしいのです。それが子どもたちの病院で過ごす「安心」につながっていきます。この続きは次回に 

前回記事
第35回はこちら。

Information

「あかはなそえじ先生のひとりじゃないよ」
四六判・全248ページ
1400円+税
学研教育みらい刊

あかはなそえじ先生・副島賢和(そえじま まさかず)

筆者:あかはなそえじ先生・副島賢和(そえじま まさかず)

昭和大学大学院保健医療学研究科准教授、昭和大学附属病院内学級担当 1966年、福岡県生まれ。東京都の公立小学校教諭を25年間務め、 1999年に都の派遣研修で東京学芸大学大学院にて心理学を学ぶ。 2006年より品川区立清水台小学校教諭・昭和大学病院内さいかち学級担任。2009年ドラマ『赤鼻のセンセイ』(日本テレビ)のモチーフとなる。2011年『プロフェッショナル 仕事の流儀「涙も笑いも、力になる」』(NHK総合)出演。2014年より現職。学校心理士スーパーバイザー。ホスピタルクラウンとしても活動中。

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