通院する子どもに必要なかかわりとは?~あなたはクラスの大事なひとり~
あかはなそえじ先生の院内学級の教師として学んだこと「第37回」
院内学級の教師として、赤鼻のピエロとしてかかわるなかで、笑顔を取り戻し、治療に向かう意欲を高めていく子どもたち。その経験をもとに、子どもとの接し方や保護者・家族とのかかわり方、院内学級の必要性、教育の重要性などについて語ってくれます。
~学校を休む子どもが本当に必要としていることは何だろう~
前回の「通院する子どもに必要なかかわりとは?~ぼくのことが本当に大切なら~」の続きです。 まだご覧になってない方は、ぜひ見てみてくださいね。
教師は、長期欠席の子どもの理由が病気の場合、ちょっとホッとします。「病気だったら仕方ないよね。ゆっくり休んで、病気を治すことに専念しましょう」となります。ですが、子どもたちにとって、学校からはなれてしまう不安はとても大きいものがあります。
とくに、病気をかかえた子どもたちは、学校から切りはなされてしまうと、病気を治すことに向かうエネルギーがとたんに落ちてしまうのです。自分のもどる場所がないと感じたり、そこで待っていてくれる人がいないと感じたりすると、病気を治すためのエネルギーがなくなってしまいます。
学校で入院したお子さんがいる場合、重い病にかかったお子さんがいた場合、亡くなったお子さんがいた場合、「学校としてどのように対応していくのか、マニュアルのようなものはありますか?」と、当時、いろいろな機会に先生方に聞いてみました。
もちろん「病院関係先につなぐ」というところまでは、ほとんどの学校があるのですが、その先があるところは少なかったように感じました。
ある校長先生に「担任の先生に、入院されている児童のおみまいに行くよう、お願いしてください」と伝えたところ、「ですが、勤務時間外のことなので少々難しいです」という返事をいただきました。また、ある先生からは「おみまいに行くのに、交通費や出張旅費が出ないのです」と言われました。
このような返答に、当時はくやしい思いを感じて、制度として整える必要があると思いました。こんな状態でしたから、当然のように、病院で過ごしているお子さんへのおみまいや、学校のおたより等で出向くことは、担任や先生一人ひとりの裁量となります。すると、病室ではある光景が見られます。
学校のおたよりをたくさんわたしてくれる先生のクラスのお子さんのベッドの周りには「学校」がいっぱいあります。そうではない先生のクラスのお子さんのベッドの周りには「学校」を感じさせるものが全くありません。前者のお子さんと、後者のお子さんでは、病気を治すためのエネルギーが明らかにちがってきてしまいます。
~あなたはクラスの大切な存在です~
ですから、先生方には「お願いですから、あなたは私のクラスの大事な一員なのです、というメッセージを、子どもに伝え続けてください」とお願いします。
「必ずおみまいに来てください」とうわけではありません。どんな形でもよいのです。手紙でも、保護者やきょうだいを通してでも、院内学級の担任や病院関係者を通じてもでもよいのです。なにか、お子さんたちが「学校とのつながり」を感じられるメッセージを、伝え続けてほしい。
院内学級では当時から、もちろん現在も、子どもたちが病気を治すためのエネルギーをたくわえるため、たくさんの取り組みや工夫をしています。
病気やけががよくなってきている実感がある、できることが増える、退院が見える、家の人と過ごせるなど、そのような機会にエネルギーがたまる姿が見られました。
「患者(かんじゃ)」から「子ども」に戻れる場があることが大切です。先生方だけでなく、保護者の方や病院関係者も子ども退院してもどるクラスとの、SNSのチャットやビデオ通話を利用したやりとりの機会を設けることができるかもしれません。
おみまいやチャットなどを通して、休んでいる子どもに「つながっているよ」「ひとりじゃないよ」というメッセージを、送り続けていけるといいですね。
前回記事
第36回はこちら。
Information
「あかはなそえじ先生のひとりじゃないよ」
四六判・全248ページ
1400円+税
学研教育みらい刊