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コラム・マンガ

子どもの好きなこと、得意なことでかかわる・前編

子どもの好きなこと、得意なことでかかわる・前編

あかはなそえじ先生の院内学級の教師として学んだこと「第38回」

院内学級の教師として、赤鼻のピエロとしてかかわるなかで、笑顔を取り戻し、治療に向かう意欲を高めていく子どもたち。その経験をもとに、子どもとの接し方や保護者・家族とのかかわり方、院内学級の必要性、教育の重要性などについて語ってくれます。

~「わたし、好きなこと、ない」~ 

院内学級に通ってくるお子さんたちはドクターから許可をもらい、病院のベッドで動けるようになって、初めて学級に来てくれます。 

当時も、現在も、初めて来てくれたお子さんに必ず書いてもらっているのが「名前、学年、誕生日」と「自己しょうかいカード」です 

「自己しょうかいカード」の項目の一つに「好きなもの」「得意なこと」があります。
「好きなものは食べ物でもいいし、生き物でもいいです。やると楽しいことでもいいし、今、ハマっていることでもいいですよ」と説明します。 

「得意なことは、周りの人から見てではなくて、自分の中で考えて書いてほしいです」と伝えると、うれしそうな表情を見せたり、何かを思い出している顔を見せたりして、みんな、いろいろ書いてくれます。 

ただ、当時、気になったのが「好きなことは、ない」「得意なことは、わからない」と、困った顔やこおりついた表情で伝えてくるお子さんたちが増えたことでした。 

自己しょうかいカードに「ない」「ない」という文字が並びます。初めての場に緊張していたのかもしれませんし、カードに文字を書くほどのエネルギーがたまっていなかったのかもしれません。本当に好きなこと、得意なことがなかったのかもしれません。 

そんなとき、院内学級の担任として「今、思いつかないなら書かなくてもいいよ。空けておいていいよ」と伝え、思い出したらいつでも書けるようにしておきます。 

本人の好きなこと、得意なことを探り、その面で付き合う ~ 

子どもたちに「ほかの子の自己しょうかいカードのどの項目を見ますか?」と聞いたことがあってそのときに一番多かった回答が「好きなことや趣味(しゅみ)が自分と同じかどうかを見る」でした。 

子どもたちも友だち関係においては、好きなことや得意なことを切り口にかかわっているわけで、保護者や教師も子どもの好きなこと、得意なことを知って、その面でかかわることが大切だと、あらためて感じました。 

院内学級でのかかわりの中で、子どもたちをしっかり見ていると、必ずそのきかっけが見えてきました。選ぶ遊びの中に、会話の中に、持ち物の中に、反応の中に、子どもたちの「好きなこと」「得意なこと」が見えてくるのです。 

実際にはそう簡単なことではありません。
当時、ある子の持ち物の中にキャラクターグッズがあったので「〇〇〇〇が好きなんだね」と投げかけると、「入学祝いにもらっただけだし、別に」と言われてしまったことがありましたが、それでも、できるだけきっかけを見つけてかかわっていきます。 

保護者や教師が、子どもの好きなものや得意なものの中身について、すべて知っている必要はありません。
たとえそのことについてまったく知らなくても「お母さんにも教えてよ」「先生も知りたいよ」という意思表示から、「あなたのことに関心がありますよ」「あなたにかかわりたいのです」というメッセージが子どもにきっと伝わるはずです。 

次回の後編では、子どもとかかわるうえで大切にしている「4つのかかわり」をお伝えします。

前回記事
第37回はこちら。

Information

「あかはなそえじ先生のひとりじゃないよ」
四六判・全248ページ
1400円+税
学研教育みらい刊

あかはなそえじ先生・副島賢和(そえじま まさかず)

筆者:あかはなそえじ先生・副島賢和(そえじま まさかず)

昭和大学大学院保健医療学研究科准教授、昭和大学附属病院内学級担当 1966年、福岡県生まれ。東京都の公立小学校教諭を25年間務め、 1999年に都の派遣研修で東京学芸大学大学院にて心理学を学ぶ。 2006年より品川区立清水台小学校教諭・昭和大学病院内さいかち学級担任。2009年ドラマ『赤鼻のセンセイ』(日本テレビ)のモチーフとなる。2011年『プロフェッショナル 仕事の流儀「涙も笑いも、力になる」』(NHK総合)出演。2014年より現職。学校心理士スーパーバイザー。ホスピタルクラウンとしても活動中。

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