子どもの好きなこと、得意なことでかかわる・後編
あかはなそえじ先生の院内学級の教師として学んだこと「第39回」
院内学級の教師として、赤鼻のピエロとしてかかわるなかで、笑顔を取り戻し、治療に向かう意欲を高めていく子どもたち。その経験をもとに、子どもとの接し方や保護者・家族とのかかわり方、院内学級の必要性、教育の重要性などについて語ってくれます。
~あかはな先生の大切な4つのかかわり~
前回のお話では子どもの好きなこと、得意なことでかかわることの大切さに気づいた、というお話をしました(前編はこちら)。院内学級での子どもたちとのかかわりは平均4、5日です。平均ですから、たった1日だけのかかわりのお子さんから、数年にわたってかかわっているお子さんもいました。 私には、どの子どもたちとのかかわりにおいても、大切にしている4つのかかわりがあります。
〇本人の好きなこと、得意なことを探り、その面で付き合う
〇子どもに活躍(かつやく)の場をあたえる
〇本人が安心していられる場所をつくる
〇不安や緊張(きんちょう)、怒りや嫌悪(けんお)などの不快な感情を、言葉で表現できるよううながす
この4つのかかわりは、不登校の子どもたちにかかわって問題をよい方向に向けた教師と、不登校の子どもたちを学校から出さなかった教師が、「子どもたちに必ず行いたい」としたものです。当時、ある市で行われた調査の結果から、東京学芸大学大学院の小林正幸教授が導き出した4つの「手筋」であります。
他県での調査からも、これらの「手筋」は学校で苦戦をしている子どもたちにとって、たいへん有効であることがわかりました。 病気をかかえているお子さんはもちろん、「すべての子どもたちに必要である」と考えて、私も実行してきました。
あるお子さんが、次のような詩を書いてくれました。
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たいいんしたら
友だちとなかよく あそべたらいい
まい日元気で いられたらいい
みんなが わらってくれるといい
家に帰って ゲームができるといい
すきなものが たべられるといい
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~子どもの詩が教えてくれること~
病気やけがが治ったら、少しでも調子がよくなったら、退院できたら、あんなことをしたい、こんなことをしよう、と考えています。
子どもたちは「好きなことや得意なことをやりたい」「好きなことや得意なことをやることができる」と思うだけで、エネルギーが出てくるようです。エネルギーがたまってきたからこそ、好きなことや得意なことに取り組めるのかもしれません。
取り組むようになってくると、病院のスタッフさんから「〇〇さん、病気を治すことに前向きになってきました」という話が出てきて、さらに、集中力やねばり強さが見られ、あまり好きではないことやちょっと苦手だと思うことにもチャレンジしようとする姿が見られるようになります。
「好きなことや得意なことを探り、その面で付き合うかかわり」は、子どもたちに、自分は自分のままでよいという気持ちや、自分にはできることがあるという気持ちをもってもらうことであり、安全で安心な居場所を提供することにほかならないと考えます。
このかかわりは、決して病気の子どもたちに限定されたものではありません。病弱教育の考え方である、「自分の病気のことを自分で管理する力」を育むことは院内学級のなかで日々取り組んでおり、どの学校でも、どの家庭でも、どの子どもたちにも有効であることがたくさんあります。それを、一人でも多くの保護者の方や教育関係者にお伝えできたらいいなと思います。
前回記事
第38回はこちら。
Information
「あかはなそえじ先生のひとりじゃないよ」
四六判・全248ページ
1400円+税
学研教育みらい刊