そのかかわりはだれのため?~主役は子ども~(前編)
あかはなそえじ先生の院内学級の教師として学んだこと「第40回」
院内学級の教師として、赤鼻のピエロとしてかかわるなかで、笑顔を取り戻し、治療に向かう意欲を高めていく子どもたち。その経験をもとに、子どもとの接し方や保護者・家族とのかかわり方、院内学級の必要性、教育の重要性などについて語ってくれます。
~本当にこどものため?~
今回は、院内学級で先生がついついやってしまったかかわりについて、いろいろ考えたいと思います。
「なぜ、今だったのか」
ある先生が放課後、病院をまわって子どもたちのところへ行き、本を読んだり、手品をしたりしてくれました。すてきなかかわりで、私もとてもうれしく思っています。
私が病室のベッドにいる子どものところへ会いに行くときは、毎回、ドキドキします。もちろん会えないこともありますし、断られることもあります。会いに行って話をしたり、本を読んだりすることが、そのお子さんにフィットしていないのではないかと感じたこともありました。それでも、時間をどうにかやりくりして、子どもたちに会いに行きます。
その日は、職員会議を終えて院内学級がある病院に戻ってきてくれたA先生が、病院をまわってくれましたが、いつもより少し遅い時間になってしまいました。
いっしょに院内学級を担当しているB先生は、A先生が見当たらなかったので、急いで病院に行ってみました。「この時間、子どもたちはダメなのに」と思いながら。
行ってみると、A先生が病室でかかわっていてくれました。保護者の方々もいっしょです。子どもたちはベッドの上で先生とお話をしたり、ベッドの上に立ち上がったり。
30分ほどして教室にもどってきたA先生に、B先生が聞きました。
B先生「放課後の子どもたちとのかかわり、ありがとうございました。でも、なぜ今、この時間だったのですか?」
A先生「そうですね、少しばかり遅すぎました。職員会議が予定よりかかり、病院に来るのがおくれてしまいました」
B先生「いえいえ、そうではないのです。毎週、この時間の30分間は、子どもたちにとってとても大切で、貴重な時間なのです。子どもたちの大好きなアニメ番組が放送される時間なのです」
A先生「あっ、そうだった」
ただ、病院にあるプレイルームでは、何人かの子どもたちが楽しそうにアニメ番組を見ることができていたので、それだけは救いでしたが。
~もう一度見直す、子どもとのかかわり~
私たち教師や、保護者、大人は、子どもたちのことを精いっぱいに考えます。「子どもたちのため」と。子どもたちによかれと思うことをしたいと考えます。でも、そのたびに私は自分に問いかけていました。「それは、本当はだれのため?」と。
ある先生が病室にいる、あるお子さんに会いに行くことになりました。その先生も私も、スタッフからその子の情報やうれしい話を聞いていたのですが、先生には「変わってしまう可能性があるので、その情報は子どもに絶対に言わないでくださいね」と伝えました。
内容は、お子さんにとってはとてもうれしい話です。でも、変わってしまう可能性もあったため、しっかり決定するまでは伝えないという確認をしたわけです。それなのに、その先生はお子さんに伝えてしまいました。
結果的に変わることはなかったので、大人の私たちがウソをつくことにならず、お子さんをガッカリさせることにもならず、ホッとしました。が、なぜその先生は、子どもに情報を伝えてしまったのでしょう。
次回の後編では 、ついついやってしまう、大人の都合で子どもにかかわってしまうことについて、その注意点をお伝えしていきます。
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第39回はこちら。
Information
「あかはなそえじ先生のひとりじゃないよ」
四六判・全248ページ
1400円+税
学研教育みらい刊