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コラム・マンガ

こどもホスピスプロジェクト~子どもの居場所と架け橋~(後編)

こどもホスピスプロジェクト~子どもの居場所と架け橋~(後編)

あかはなそえじ先生の院内学級の教師として学んだこと「第43回」

院内学級の教師として、赤鼻のピエロとしてかかわるなかで、笑顔を取り戻し、治療に向かう意欲を高めていく子どもたち。その経験をもとに、子どもとの接し方や保護者・家族とのかかわり方、院内学級の必要性、教育の重要性などについて語ってくれます。

 ~大阪からはじまる子どもホスピスの輪~

義務教育を修めたあとも、病気をかかえた子どもたちへの教育保障はいったいどうなっていたのでしょうか。 

たしかに、単位や教員の配置など、大きな課題もありますが、それでも2015年に大阪市鶴見区に「こどもホスピス」ができました。開設時の社会のようすを見ると、高校生の年で病気をかかえた子どもたちに対して、教育的な保障を行っていくことは必要不可欠でした。 

大阪府では、高校生の働きかけによって、大阪府教育委員会が病院に講師を送るサポート制度が創設されました。それをきっかけに、神奈川県や愛知県の高校生も自治体に声を届け、動き出したという話があります。 

病気をかかえた子どもたちの病気の治しが進めば進むほど、病気に打ち勝ち、成長していく子どものことを、社会全体で考えていかなければなりません。 

「こどものホスピス」を創っていく話し合いの中で、「子どもの成長に教育は欠かせない」という声が病院関係者からも出ました。「こどもホスピスの中に学校を創れませんか?」とも言われました。日々、病気をかかえた子どもたちとかかわっている病院関係者だからこそ、教育の必要性を感じておられました。「子どもにとって学ぶことは生きること」とお伝えしてきた私にとっては、本当にうれしいお言葉でした。 

もちろん、病院内や建物内に学校があり、病気を治すなかでも学びを続けられるシステムを整えていく必要はあります。ただ、子どもたちは退院したからといって、全快で社会復帰、学校復帰ができるわけではありません。その後も入退院をくり返し、病気を治すことを続けていかなければならない子どもたちがたくさんいます。このような子どもたちにとっても、学びのシステムを用意していくことは、とても大切なことなのです。 

~横浜宣言で全国に種をまこう~

「こどものホスピス」は病気による困難をかかえた子どもたちの居場所であり、当人やその家族が羽根を休めに来ることができる場所です。そこでの学びを通じて、社会とつながり、社会に出ていくための力を蓄える、社会との架け橋でもあるのです。 

ちなみに20218月現在、大阪市鶴見区のほか、北海道、東京、横浜、長野、福井、福岡など、各地で「こどものホスピスプロジェクト」が立ち上がっています。毎年2月には「全国こどもホスピスサミット」が開会され、第1回横浜大会において2019年横浜宣言」が合意されました。 

1 医療・福祉・教育の間にいる子どもや家族に寄り添います
2 命を脅かされている子どもと家族に豊かな時間を提供します
3 地域と共に歩む開かれた施設を目指します
4 小児緩和ケアに取り組む支援施設を全戸に広げていくため協力し合います
 

また、428日は「こどもホスピスの日」、428日から55日までが「日本こどもホスピスウィーク」となりました。 

さらに「こどもホスピス」が病院の中にある淀川キリスト教病院こどもホスピスや、認定NPO法人うりずん、国立成育医療研究センターの医療型短期入所施設もみじの家などがあります。命を脅かされている子どもたちや家族のための施設や取り組みが、日本各地に広がっています。私が知らない施設や活動があると思いますので、教えていただけたらうれしいです。 

前回記事
第42回はこちら。

参考「各地のこどもホスピスプロジェクト (都道府県行政順)」 

ビジョン:私たちのホスピスは、こどもとその家族が、安心して寛ぎ、楽しみ、学び、その子らしく過ごすことのできる場であります。
活動:「北海道こどもホスピスプロジェクト講演会」「ユニバーサルおやこコンサート」 「お料理教室&ランチ会」「あそびかた研究会」「こども夏祭り」等 

理念:こどもたちと、その家族に笑顔と思い出を
イベント:「東京こどもホスピスフォーラム」「令和3年度第1回東京こどもホスピス講演会」等
これからの活動:「相談窓口の開設」「学びや遊びの機会の提供」「ピアサポート」 

理念:この瞬間を笑顔に! みんなで支えて叶えたい!
活動:2021年秋「うみとそらのおうち」開設予定 。そのほか「こどもホスピス・小児緩和ケア人材育成プログラム」「病児と遊びの研究会」「こどもホスピスフェスティバル」等 

目指すこどもホスピス:病気や障害のあるなし・闘病中か治療後か見送ったのか、などの区別をせず、「こどもも親やきょうだい児もみんなが笑顔で自分らしくいられる地域」の拠点となるような場
イベント:「うちわ作りとお話会」「オンライン交流会」等
今後の計画:「こどもと家族を支える活動」「勉強会やイベントの開催」「自治体やこどものサポート団体、教育施設や病院などとの連携」 

理念:将来、当たり前のようにこどもホスピスが存在し、より多くの終末期のこども達が、家族一緒に日常を過ごすことができる世の中になるように、われわれは活動していきます。
活動:「信州こどもホスピス語る会『ゆうきの会』」「信州こどもホスピス実現オンラインシンポジウム」等 

  • TSURUMIこどもホスピス(大阪市鶴見区)

理念:Live deep 「深く生きる」必要のある子どもたちを支える
活動:「あわFESTIVAL」「大阪マラソンチャリティーランナー」「サポカフェオンライン」「TCHフォトブック〜その子の時間、家族の時間」「CHOBO・カフェ」「トークセッション『こどもホスピスの未来を語ろう』」等

目的:重い病気や障がいをもつ子どもたちにさまざまな経験をしてもらう
活動:「空にかかるはしご〜グリーフの会〜」「わくわくたなばたまつり」「コココのダンス」「こどもホスピス・小児緩和ケア人材育成プログラム」等 。こどもホスピスが病院の中にある施設 。

概要:小児がんや難病のお子さま一人ひとりの成長発達に合わせた個別性のあるケアを提供しています。また、お子さまがご家族や大切な方々と過ごせるように、楽しさと癒しを重視した支援も行っています。 

Information

「あかはなそえじ先生のひとりじゃないよ」
四六判・全248ページ
1400円+税
学研教育みらい刊

あかはなそえじ先生・副島賢和(そえじま まさかず)

筆者:あかはなそえじ先生・副島賢和(そえじま まさかず)

昭和大学大学院保健医療学研究科准教授、昭和大学附属病院内学級担当 1966年、福岡県生まれ。東京都の公立小学校教諭を25年間務め、 1999年に都の派遣研修で東京学芸大学大学院にて心理学を学ぶ。 2006年より品川区立清水台小学校教諭・昭和大学病院内さいかち学級担任。2009年ドラマ『赤鼻のセンセイ』(日本テレビ)のモチーフとなる。2011年『プロフェッショナル 仕事の流儀「涙も笑いも、力になる」』(NHK総合)出演。2014年より現職。学校心理士スーパーバイザー。ホスピタルクラウンとしても活動中。

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