【美しいイラストで知る 歴史をつくった女性人物ストーリー】 第8回 イギリスの黄金期を築いた女王<エリザベス1世>
教科書などを読むと、男性の歴史人物を多く目にする印象がありますね。でも、世界・日本の長い歴史の中には、歴史をつくる活躍をした女性も数多くいるのです。
ここでは、多くの困難に立ち向かいながら、信念を貫き、功績を残した女性たちの姿を美しいイラストとともに紹介します。歴史をつくった女性たちのストーリーを入り口に、日本や世界の歴史を知る旅に出かけましょう。
2月6日、イギリスの女王・エリザベス2世が、イギリス君主として初めて在位70年を迎えました。この1年間イギリスでは、「プラチナ・ジュビリー」の祝賀行事が各地で行われます。
今回は、16世紀の後半にイギリスの黄金期を築いた知性あふれる女王・エリザベス1世を紹介します。
エリザベス1世 (1533年~1603年/イギリス)
つらい境遇の中で磨いた知性!
イギリス国王のヘンリー8世の娘として生まれたエリザベスでしたが、その境遇は決して恵まれたものではありませんでした。4歳のころに母親がぬれぎぬを着せられて処刑されました。エリザベス自身も厳しく監視され、不安な日々を過ごすことになりました。そんな境遇の中でもエリザベスは努力を怠らず、洗練された作法と高い教養を身につけます。そして、忍耐力と冷静さも持ち合わせた、知性あふれる女性へと成長したのです。
転機が訪れたのは26歳のときでした。姉である女王が亡くなり、次の王になることが決まったのです。このとき、エリザベスは固く誓います。
「私は王としてこの国を守る!」
女王になったエリザベスは、混乱していた国内の問題を次々に解決します。彼女は民衆から強く支持され、「善き女王ベス」と呼ばれるようになりました。
無敵艦隊に勝利し、世界中と貿易!
当時、スペインは世界最強といわれた「無敵艦隊」と呼ばれる海軍を持ち、軍事でも貿易でも圧倒的な力を誇っていました。その無敵艦隊にイギリスが攻め込まれたとき、女王であるエリザベスの冷静な判断により、イギリスは大勝利を収めます。スペインに代わって海上を支配する力を持ったイギリスは、世界中で貿易を行うようになり、国際的な地位が大きく高まりました。エリザベス1世が在位した約40年間の間に、イギリスは繁栄の道を突き進んでいったのです。
エリザベスは「私はすでに国家と結婚しています」という言葉を残しました。女王の結婚は外交や政治を揺るがすことを知っていたエリザベスは、生涯独身を貫きました。恋より国家を守ることを選んだのです。
【歴史解説】彼女が生きたヨーロッパ近世の初めとはどんな時代?
“マゼラン一行が世界一周 (1522年)”
15世紀から16世紀にかけて、ヨーロッパの国々が、アジアへ行くための新しい航路を求めて世界に進出していきました。このような動きの中、スペインの援助を受けたマゼランの艦隊は、1522年に世界一周を達成しました。
“カルバンがスイスで宗教改革を始める (1541年)”
16世紀にヨーロッパで起こったキリスト教の改革運動を「宗教改革」といいます。ローマ教皇による免罪符の販売を批判して、1517年にドイツでルターが、1541年にはスイスでカルバンが宗教改革を始めました。
“『ロミオとジュリエット』初演 (1595年ごろ)”
エリザベス1世が在位した時代、イギリスの文化も大きく飛躍しました。宮廷が芸術家や作家を保護したことから、劇作家のシェークスピアをはじめ、多くの詩人や画家が後世に残る優れた作品を生み出しました。恋愛悲劇として有名なシェークスピアの戯曲『ロミオとジュリエット』の初演は、1595年ごろのロンドンといわれています。
出典
『歴史をつくった女性大事典<1>古代~近世の巻』
『歴史をつくった女性大事典<2>近代~現代の巻』
学研プラス(編)/監修:服藤早苗(埼玉学園大学教授)
各定価:3,520円(税込)