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コラム・マンガ

子どもの声を聴く~子ども理解のために何ができる?~後編

子どもの声を聴く~子ども理解のために何ができる?~後編

あかはなそえじ先生の院内学級の教師として学んだこと「第45回」

院内学級の教師として、赤鼻のピエロとしてかかわるなかで、笑顔を取り戻し、治療に向かう意欲を高めていく子どもたち。その経験をもとに、子どもとの接し方や保護者・家族とのかかわり方、院内学級の必要性、教育の重要性などについて語ってくれます。

~こころの声が言葉になる~

 前回の続きです(前回記事はこちら)。
子どもがけんかをしたり、相手をたたいたりする行動化や、具合が悪くなってしまう身体化は、大人にとってはノイズ(雑音)になってしまいますが、そのノイズこそが子どもたちが必死なって伝えているサイン、シグナルであり、その「メッセージを聞くこと」が「子どもの声に耳をかたむける」ことだと考えます。 

実は、その行動化や身体化をノイズだと感じているのは、大人だけではありません。泣かないよう、おこらないよう、大人たちの言うことを聞いて、顔色をうかがいながら過ごしている子どもたちにとっても、それはノイズなのです。 

「自分はこんなにがまんしているのに、なぜ、あいつは平気で、泣いたり、おこったり、好き勝手にやっているの?」 

「なぜ、先生たちは、あいつを注意しないの? みんながまんをしてがんばっているのに」 

自分の心にふたをして過ごしている子どもたちの横で、泣いたり、おこったり、感情をむき出しにして大人の言うことを聞かない子がいたら、それを理解できずにいかりがわいてくるのも当然の感情だと思います。 

~がまんする子どもたちの声に耳をかたむけたい~

 子どもたちは、たくさんのジレンマをかかえながらも、言葉で自分の思いや考えを伝えてくれます。子どもたちが教えてくれました。 

「べつに」──自分の気持ちがよくわからない。今の気持ちに合った言葉をもっていない、わからない。 

「なんでもない」──今は放っておいてほしい。あなたのかかわりはフィットしない。 

「だいじょうぶ」──自分でやってみたい。周囲の人たちに心配かけたくない。 

「やりたくない」──やらなければいけないことはわかっている。やりたくない気持ちを聞いて。 

「やらない」──今はほかのことに引っかかっているので、そこには気持ちが向かない。 

 子どもたちの言葉を聞いて、それが子どもたちの気持ちを100%表していると考える人はほとんどいないでしょう。だから大人たちは、言い方や表情、しぐさや様子など、多くの情報からその表現の向こう側にある世界を読み取ろうとします。 

それでも子どもたちは、少しズラしてみたり、自分の気持ちとまったくちがう表現をしてみたり、表現をしない方法を使って伝えようとしたりするということにも気をつけたいですね。

自分の中にあるものをどう言葉にしてよいのか、なやんでいる子どもたちもいます。とくに思春期の場合、からだで感じていることと言葉のズレを感じて、言葉にできなくなることが多くあります。言葉として発したら「あなたはさっき〇〇と言ったじゃないの」と決めつけられることもひどくいやに感じる子どもたちもいます。 

これらをすべて受け取り、理解することはとても難しいことですが、子どもたちの表現の向こう側にあるこころの声にふれて、子どもたちのこころを想像できる力、言葉にできる力をもちたいと思います。 

前回記事
第44回はこちら。

Information

「あかはなそえじ先生のひとりじゃないよ」
四六判・全248ページ
1400円+税
学研教育みらい刊

あかはなそえじ先生・副島賢和(そえじま まさかず)

筆者:あかはなそえじ先生・副島賢和(そえじま まさかず)

昭和大学大学院保健医療学研究科准教授、昭和大学附属病院内学級担当 1966年、福岡県生まれ。東京都の公立小学校教諭を25年間務め、 1999年に都の派遣研修で東京学芸大学大学院にて心理学を学ぶ。 2006年より品川区立清水台小学校教諭・昭和大学病院内さいかち学級担任。2009年ドラマ『赤鼻のセンセイ』(日本テレビ)のモチーフとなる。2011年『プロフェッショナル 仕事の流儀「涙も笑いも、力になる」』(NHK総合)出演。2014年より現職。学校心理士スーパーバイザー。ホスピタルクラウンとしても活動中。

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