キレる子を育てる? ~子どもが自分の感情をコントロールするためのかかわり方~前編
あかはなそえじ先生の院内学級の教師として学んだこと「第50回」
院内学級の教師として、赤鼻のピエロとしてかかわるなかで、笑顔を取り戻し、治療に向かう意欲を高めていく子どもたち。その経験をもとに、子どもとの接し方や保護者・家族とのかかわり方、院内学級の必要性、教育の重要性などについて語ってくれます。
「子どもの感情をこわすことは簡単です」
すこしドキッとするような話をしましょう。「子どもの感情をこわすのは簡単です」というのは、以前からよく講演会や保護者会などでお伝えてしていることです。私は、子どもたちが常に自分の感情を大切にしてくれるように、適切にコントロールしてくれるようにと考えながら、院内学級で日々、子どもたちとかかわっていました。子どもたちが自分の感情を適切にコントロールすることができなければ、どのような問題が起こってしまうのでしょうか。
- 社会性
- レジリエンス
大きく分けて、この二つがあると思います。
たとえば「社会性」です。となりのベッドで泣いている子がいたら、どんな声をかけるでしょう。自分自身、いっしょうけんめい、泣かないようにと過ごしている子は「うるさい、泣くな!」と言うでしょう。そうです、自分が泣きたい気持ちにふたをしている子は、泣いている相手に「かわいそうだね、どうしたの?」などと言えるはずがありません。
このようなお子さんが、人と上手にかかわることは、たいへんむずしいでしょう。
もう一つの「レジリエンス」ですが、感情を適切にコントロールできない子どもは、「がんばる力」「がまんする力」を上手に発揮することができません。
社会性も、レジリエンスも、学校での教育活動を通して、子どもたちに身につけてもらいたい力だと思います。そのためには、子ども自身が感情を適切にコントロールすることを身につけていくのがとても大切になります。では、身につけるために大人としてどのようなかかわり方が必要でしょうか?
保護者会などで伝える「感情をこわすことは簡単です。そのためには……」と言って、いつも逆説的なお話をさせてもらっています。私は、それを聞いている大人たちが自分自身で考えて、子どもが適切に感情をコントロールしていけるようなかかわりをしてほしいと思っているからです。
★キレる子を育てる
「キレるお子さんを育てたい場合、お子さんの心やからだにとてもいやな感情がわき上がってきて、“なんだ、この気持ちは。どうしたらいいの?”と泣いたり、おこったりしたときに、『泣くな! おこるな!』と、力でねじふせてあげてください」とお伝えします。
子どもにとって大切な保護者の方や、尊敬する大人、先生から「泣くな」「おこるな」と言われたら、みんな、泣きやみます。おこることをやめます。きらわれるのはいやなことですから。もちろん、発達段階の違いによって時間がかかる子どももいますが、それでもやめます。
でも、これは自分の感情にふたをしただけのこと。決して理解をしたり、納得したりしているわけではありません。ふたをしただけなのです。
ですから、いつの日か、そのふたを開けるときがきます。これはフラッシュバックと呼ばれる状態です。フラッシュバックは時間を飛び越えます。きっかけさえあれば、つらかったあのときに心や頭、からだの感覚が飛んでいきます。
つらかった出来事がフラッシュバックし、たまっていた感情が爆発してしまった子どもは、こう言われます。「何をキレているの?」と。
こんな子どもを育てたいときには、どうぞ、子どもの感情にふたをしてあげてください。
すこしモヤモヤするような気持ちにさせてしまったかもしれません。でもこれを読んだ方たちはきっと、子どもが求めている、本当に必要なかかわりに気づいていると思っています。
次回は「わがままな子」「無気力な子」を育てる話をします。ぜひご覧になって、自分自身のこれまでのかかわり方とこれからのかかわり方について考えるきっかけにしてみてくださいね。
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第49回はこちら。
Information
「あかはなそえじ先生のひとりじゃないよ」
四六判・全248ページ
1400円+税
学研教育みらい刊