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コラム・マンガ

院内学級の出会いと別れ 前編

院内学級の出会いと別れ 前編

あかはなそえじ先生の院内学級の教師として学んだこと「第52回」

院内学級の教師として、赤鼻のピエロとしてかかわるなかで、笑顔を取り戻し、治療に向かう意欲を高めていく子どもたち。その経験をもとに、子どもとの接し方や保護者・家族とのかかわり方、院内学級の必要性、教育の重要性などについて語ってくれます。

あかはな先生のはたらくところ

私が働いている、東京品川区の昭和大学病院の中の院内学級「さいかち学級」には、年間に120人から150人ほどの子どもたちが顔を見せてくれます。 

さいかち学級に通うには学校を移動する手続きが必要です。しかし、病気を治す方法が子どもによってちがうことや入院の短期化などから、学校移動の手続きをする前に退院していく子どもたちもたくさんいます。 

よく「どのようなお子さんたちが通って来られるのですか?」と聞かれることがあります。 

病院の中の学校・学級は、それぞれの病院でちがいがあり、学校・学級ごとにもとくちょうがあるため、いちがいに言うことはできませんが、私がかかわっている学級で出会うお子さんたちは、本当にさまざまです。 

事件や事故で大けがをした子どもたち。感染による病気や手術のため急に、入院することになった子どもたち。小さいころから何度も手術をくり返している子どもたち。リストカットや食べることにかかわるような心の病をもった子どもたち。長期的な病気をもち、何度も入退院をくり返しながら生活している子どもたち。DVや貧困など児童相談所関係で入院している子どもたち。もちろん命にかかわる病気の子どもたちもいます。 

入院していることが条件の学級なので、本当にさまざまな状態の子どもたちとの出会いがある教室です。 

病院では、ふだん訪問教育を受けているような、重度のストレスからくる心の病気をもった子どもたちとの出会いもあります。 

学年もさまざまで、病院との話し合いにより、「居場所づくり」という観点から、小学生だけでなく、中学生や高校生も来てくれています。小さいころから入退院をくり返していた子どもは、大学生になっても顔を出してくれることがあります。 

 「本当に会えてよかった」

入院をして、病気を治している子どもたちに「病院の中でも、入院中に通うことができる学校があるんだよ」と言うと、「病気なのに学校?」「入院中も勉強するの?」と言われることがほとんどです。 

病気を治すことが最優先ですから、院内学級は子どもたちにとって、必ずしも通わなければならない場所ではありません。そのような場所であったとしても、体調を理由に通わないことはいくらでもできる場所なのです。 

ですから、「勉強が心配だったから来てみた」だとしても、「ヒマだから行ってみようかな」だったとしても、それこそいやいやでも、学級に顔を出してくれた子どもたちに、私は「本当によく来てくれました」と心の底から思うのです。 

 後編では、院内学級で出会う子どもとの一期一会のかかわりをする、あかなは先生の願いや思いを知ってほしいと思います。ぜひご覧になってください。

第51回はこちら。

Information

「あかはなそえじ先生のひとりじゃないよ」
四六判・全248ページ
1400円+税
学研教育みらい刊

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あかはなそえじ先生・副島賢和(そえじま まさかず)

筆者:あかはなそえじ先生・副島賢和(そえじま まさかず)

昭和大学大学院保健医療学研究科准教授、昭和大学附属病院内学級担当 1966年、福岡県生まれ。東京都の公立小学校教諭を25年間務め、 1999年に都の派遣研修で東京学芸大学大学院にて心理学を学ぶ。 2006年より品川区立清水台小学校教諭・昭和大学病院内さいかち学級担任。2009年ドラマ『赤鼻のセンセイ』(日本テレビ)のモチーフとなる。2011年『プロフェッショナル 仕事の流儀「涙も笑いも、力になる」』(NHK総合)出演。2014年より現職。学校心理士スーパーバイザー。ホスピタルクラウンとしても活動中。

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