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コラム・マンガ

「いのちの学習」で伝えたい3つのこと 前編

「いのちの学習」で伝えたい3つのこと 前編

あかはなそえじ先生の院内学級の教師として学んだこと「第55回」

院内学級の教師として、赤鼻のピエロとしてかかわるなかで、笑顔を取り戻し、治療に向かう意欲を高めていく子どもたち。その経験をもとに、子どもとの接し方や保護者・家族とのかかわり方、院内学級の必要性、教育の重要性などについて語ってくれます。

「いのちの学習」はむずかしい

今から7、8年前あたりから「いのちの学習をしていただけませんか?」というお声がけをいただくようになりました。「いのちの学習」は、通常学級の担任をしているときにもほかの先生方から教わり、トライアンドエラーしながら行ってきたものです。私は、教科や教科外を通して「いのちの大切さ」を子どもたちに伝えてきたつもりでした。

それでも、「いのちの学習」になかなか納得できる実感が得られず、院内学級の担任になってからも、その思いは変わりませんでした。どのように「いのちの学習」を行えばよいのか、苦しみ、迷っていたとき、子どもたちから教わったことがあります。

ある男の子がいました。内臓に病気があり、小さいころから入退院をくり返してきた子です。男の子が高校生になったとき、体調をくずして再入院してきました。しかしながら男の子は、日々、たくさんの不適応行動をしています。そこで、大人から「そんなことをしているから、体調が悪化するのだ」「悪化するのは当たり前」と言われ、しまいには「高校生にもなって、そんなこともわからないのか」としかられます。

そんな男の子が、私と教室にいるとき、ふとつぶやいたのです。

「どうだっていいんだよ、おれなんか」

男の子が、自分自身を大切に思えていないことが、ひしひしと伝わってきました。

自分を大切に思えない子どもに「いのちは大切ですよ」と伝えても、それは別世界のお話に聞こえてしまいます。そんな子に「そうだよ、いのちは大切だよ」と思ってもらうために、私は何をすればよいのだろうと考えてみました。その子が「自分が大切」と思えるようになるには、どんなことをすればよいのだろうと考えてみました。

「自己ちゅうと言われる子どもに、自分は大切だと、それ以上伝えてよいのでしょうか?」と言われたことがあります。自己ちゅうと言われる子どもたちは、なんのために自己中心的でならなければならないのか、と考えてみます。

すると、「自分は大切な存在である」「自分は大切にされている」という実感が心からもてず、「もっとぼくを見て」「もっと私を見て」と、「もっと、もっと」とさけんでいるように見えてきました。そのさけびは、自分のとなりにいる人さえ目に入らなくなってしまうぐらいです。

「いのちの学習」で伝えたいこと

当時、ある小学校から声をかけていただいて、3年生以上の子どもたち、保護者、地域の方々、教職員に向けてお話をしたことがあります。

このときは、大きく3つのことを伝えたいと考え、次のようにまとめてみました。

  • どんな感情も大切にしてほしい
  • あなたは、ひとりじゃない
  • いのちはだれにとっても1(イチ)

まず、ビデオを見ながら院内学級の様子をしょうかいします。学級には車いすを使っている子や、てんてきを付けている子もいることを、みんなが知ります。学級通信を紹介しながら、各教科の学習や休み時間、始業式や終業式、卒業式もあることを知ります。

次回はじっさいの授業風景を通して、子どもにどのような変化・学びがあるのかをお伝えしていきます。
ぜひご覧になってくださいね。

前回記事
第53回はこちら。

Information

「あかはなそえじ先生のひとりじゃないよ」
四六判・全248ページ
1400円+税
学研教育みらい刊

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あかはなそえじ先生・副島賢和(そえじま まさかず)

筆者:あかはなそえじ先生・副島賢和(そえじま まさかず)

昭和大学大学院保健医療学研究科准教授、昭和大学附属病院内学級担当 1966年、福岡県生まれ。東京都の公立小学校教諭を25年間務め、 1999年に都の派遣研修で東京学芸大学大学院にて心理学を学ぶ。 2006年より品川区立清水台小学校教諭・昭和大学病院内さいかち学級担任。2009年ドラマ『赤鼻のセンセイ』(日本テレビ)のモチーフとなる。2011年『プロフェッショナル 仕事の流儀「涙も笑いも、力になる」』(NHK総合)出演。2014年より現職。学校心理士スーパーバイザー。ホスピタルクラウンとしても活動中。

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