【美しいイラストで知る 歴史をつくった女性人物ストーリー】 第15回 信念をもって環境を守った女性<レイチェル=カーソン>
教科書などを読むと、男性の歴史人物を多く目にする印象がありますね。でも、世界・日本の長い歴史の中には、歴史をつくる活躍をした女性も数多くいるのです。
ここでは、多くの困難に立ち向かいながら、信念を貫き、功績を残した女性たちの姿を美しいイラストとともに紹介します。歴史をつくった女性たちのストーリーを入り口に、日本や世界の歴史を知る旅に出かけましょう。
6月5日は、世界環境デー(環境の日)です。第15回は、環境保護のパイオニアとして知られる女性、レイチェル=カーソンを紹介します。
レイチェル=カーソン (1907年~1964年/アメリカ)
「黙っているわけにはいかない。事実を知らせなくては」
レイチェル=カーソンが『沈黙の春』の執筆にとりかかったのは、そんな思いからでした。1958年のこと、作家で海洋生物学者でもあったレイチェルは、友人からの1通の手紙を受け取ります。それは、DDT(ディーディーティ)※という農薬の被害を訴える手紙でした。以前から農薬の危険性に関心のあったレイチェルは、早速調査を開始します。そして、飛行機から大量散布される農薬にふくまれる化学物質が、環境を破壊し、人体にも害になることを知らせる必要があると、強く感じたのです。
雑誌での『沈黙の春』の連載が始まると、化学薬品会社から連載をやめるよう圧力がかかりましたが、レイチェルが信念を曲げることはありませんでした。連載中からアメリカ全土で大きな反響を呼び、単行本になると世界各国で翻訳されて、人々が環境問題に目を向けるきっかけになったのです。
※DDT…有機塩素系の殺虫剤。第二次世界大戦の戦場で、病気を媒介するノミやシラミの駆除に使われ、戦後は農薬として大量に使用された。現在、先進国を中心に多くの国で使用が禁止され、日本では1971年に使用が禁止された。
【歴史解説】彼女が生きたのはどんな時代?
“国際連合が設立! (1945年)”
第二次世界大戦後の1945年10月、2度の世界大戦の反省から、世界の平和と安全を守るために国際連合(国連)が設立されました。国連には全加盟国が参加して全体に関わることなどを決める総会のほか、ユネスコやユニセフなど目的に応じた機関があります。日本は1956年に加盟しました。
“冷たい戦争(冷戦)が続く! (第二次世界大戦後~)”
第二次世界大戦後、アメリカ中心の資本主義国(西側陣営)と、ソ連率いる社会主義国(東側陣営)が対立。直接戦火を交えないことから冷たい戦争(冷戦)と呼ばれました。経済・軍事の面で圧迫を加え合う冷戦は、1989年に終結が宣言されました。
“キューバ危機が起こる! (1962年)”
1959年にカリブ海の島国・キューバで革命が起こり、社会主義の政権が成立して、キューバは同じ社会主義国であるソ連と急速に接近。1962年、ソ連がキューバに核ミサイルを配備すると、キューバに近く、冷戦で対立しているアメリカとソ連の間で核戦争の危機が高まりました(キューバ危機)。しかし、ソ連がミサイルを撤去し、危機は回避されました。
出典
『歴史をつくった女性大事典<1>古代~近世の巻』
『歴史をつくった女性大事典<2>近代~現代の巻』
学研プラス(編)/監修:服藤早苗(埼玉学園大学教授)
各定価:3,520円(税込)