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コラム・マンガ

学校から遠のく子どもたち

学校から遠のく子どもたち

あかはなそえじ先生の院内学級の教師として学んだこと「第66回」

院内学級の教師として、赤鼻のピエロとしてかかわるなかで、笑顔を取り戻し、治療に向かう意欲を高めていく子どもたち。その経験をもとに、子どもとの接し方や保護者・家族とのかかわり方、院内学級の必要性、教育の重要性などについて語ってくれます。

「不登校」と「長期欠席」のちがい

文部科学省は学校でのトラブルとして暴力やいじめ、不登校を把握するために、全国の国公立、私立の小中高等学校、特別サポート学校を対象に調査を行っています。

令和2年度の小・中学校における調査では、長期欠席者は28万で、このうち不登校児童生徒数は19万人でした。長期欠席者は6年前と比較して約10万人増加し、不登校児は約7万人も増回しています。

私は、以前から「不登校」の児童生徒数に着目してきましたが、ある時点から「長期欠席者」の児童生徒数を把握することが大切であることを学びました。

なぜなら、「不登校児童生徒数」には「病気」や「経済的な理由」等で長期欠席になっている子どもたちの数がカウントされていないからです。これらの理由で学校に行くことができない子どもたちは「長期欠席者」のほうにカウントされているのです。

学校から遠のく子どもたちを止める

どのような理由であれ、学校に通えない子どもたちに対して、私たち教師はサポートをしなければならないと考えます。ただ、学校に通えない理由が「病気」となったとき、少しきょりをあけてしまう自分がいたことに気づきました。

その理由が「友人関係」や「教師との関係」「学業の不振」にあるとき、教師たちは足しげく児童生徒の家に通ったり、電話をしたりします。

しかし、それが「病気」となると、「この子は不登校ではなく、長期欠席者なのだ」と思うことで、少しばかりホッとする自分がいました。

「そうですか、病気だったのですね。それなら仕方がないですね。今はゆっくり休ませてあげてください。しっかり治してからでいいので、1日も早く登校できるようにがんばってと伝えてください。ときどきおみまいに行こうと思いますし、友だちに手紙を届けてもらいます。治してもどって来ることを待っています」

現在、院内学級で病気のある子どもたちとかかわっていると、子どもたちのからだと心がとても密接な関係であることがわかります。そこに線引きをすることはとても難しいこと。入院をしているから、診断書(しんだんしょ)があるからというだけで、「病気が理由」としてカウントしてよいのだろうかと考えます。

私の中に「元気になったら学校においで。待っているよ」という気持ちがありました。どこかで、学校は元気な子どもたちがいるところだという意識があったのでしょう。その意識が、結果的に子どもたちが学校から遠のくきっかけになっていたのかもしれません。

病気の子どもたちが学校に復帰したあと不登校にならないために、院内学級の担任として、入院時点から学校復帰への取組を始め、できるだけスムーズに戻れるよう学校側と連絡を取り合い、病院関係者への働きかけや保護者のニーズもくみ取っていきます。

それでも、これだけの数の子どもたちが学校から遠ざかっているとしたら、まだまだやらなくてはいけないことがあるのだと考えます。

Information

「あかはなそえじ先生のひとりじゃないよ」
四六判・全248ページ
1400円+税
学研教育みらい刊

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あかはなそえじ先生・副島賢和(そえじま まさかず)

筆者:あかはなそえじ先生・副島賢和(そえじま まさかず)

昭和大学大学院保健医療学研究科准教授、昭和大学附属病院内学級担当 1966年、福岡県生まれ。東京都の公立小学校教諭を25年間務め、 1999年に都の派遣研修で東京学芸大学大学院にて心理学を学ぶ。 2006年より品川区立清水台小学校教諭・昭和大学病院内さいかち学級担任。2009年ドラマ『赤鼻のセンセイ』(日本テレビ)のモチーフとなる。2011年『プロフェッショナル 仕事の流儀「涙も笑いも、力になる」』(NHK総合)出演。2014年より現職。学校心理士スーパーバイザー。ホスピタルクラウンとしても活動中。

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