子どものがん教育・2
あかはなそえじ先生の院内学級の教師として学んだこと「第70回」
院内学級の教師として、赤鼻のピエロとしてかかわるなかで、笑顔を取り戻し、治療に向かう意欲を高めていく子どもたち。その経験をもとに、子どもとの接し方や保護者・家族とのかかわり方、院内学級の必要性、教育の重要性などについて語ってくれます。
がん教育を行う際の3つのポイント
病気を治すことを終えた子どもたちのほとんどが、いわゆる通常学級にもどっていきます。病気を治しながら学校へ通っている子どもたちもいます。
多くの先生や保護者の方に知っていただきたいものとして「病気療養児に対する教育の充実について」という文部科学省の通知があります。それに関連してがん教育の報告書もいくつか見ることができます(くわしくはこちら)。
当時、すでに多くのモデル校で研究が行われ、いくつかの教材等もネットで公開されていました。これらの情報をふまえて、がんの教育を行う際のポイントを大きく3つに分けました。
- 「がんの知識をもつ」
- 「がんの予防をする」
- 「身近な人ががんになったときのことを考える」
がんをわずらう人は2人に1人、がんが原因で亡くなられる人は3人に1人といわれています。現状や対応を子どもたちに知ってもらうため、教育が果たす大きな役目がそこにあると思います。
私が思うことは、小児がんのあつかいやAYA世代(15~30さい前後の思春期・若年成人のこと)のがんの人たちにも注目してほしいということ。たとえば、がん教育推進であつかう多くの教材は大人のがんなのです。全国の小児がんをわずらうお子さんは年間約2,000人といわれており、大人のがんのように予防ができないのです。
がん教育を進めていく中で、がんの子どもたちへの教育をどのようにあつかっていくのか、まだまだ議論が必要であると考えます。
晩期合併症(ばんきがっぺいしょう)
この言葉をご存じでしたでしょうか。
小児がんの子どもたちに生じる合併症のことで、病気を治す方法やねんれいが関係します。
年が上がるにつれて発症(はっしょう)しやすくなり、病気を治した後、何十年が経過して病気が現れることもあります。くわえて、さまざまな病気が現れることもわかっています。
学校にもどってこられるようになった子どもたちは、とってもうれしそうですが、それでも不安が出てくることも多いのです。
「なんだか背がのびなくなったみたい」
「あんな病気の治し方をしたけど、子どもを産めるのかな。お母さんになれるのかしら」
「運動ができなくなっちゃったんだよ」
「以前のことを思い出せないことがある」
「新しい勉強が覚えられない、頭に入ってこない」
「先生、もしも、また病気になったら、どうしよう」
こんなことを伝えてくる子どもたちがいます。家ならまだしも、学校ではこのような不安をだれに伝えたらいいのでしょう。
教師としては「つらい思いをしてきたのだから、せめて学校では病気を思い出させたくない。みんなと同じようにさせてあげたい」と思ってしまいます。私もそうでした。
子どもたちの中に不安がわいてきたとき、しっかりと受け止められる存在でありたいと、親として、院内教師として痛切に感じます。
次回の「子どもへのがん教育・3」では「リレー・フォー・ライフ」というがんの方やその家族をサポートするチャリティー活動についてのお話をします。こちらもぜひ読んでみてくださいね。
Information
「あかはなそえじ先生のひとりじゃないよ」
四六判・全248ページ
1400円+税
学研教育みらい刊