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コラム・マンガ

学研の俳句おにいさんが解説 読解力が伸びる! 親子で味わう俳句 第8回

学研の俳句おにいさんが解説 読解力が伸びる! 親子で味わう俳句 第8回

28歳の若さで学研の編集者と俳人、2つの顔をもつ中西亮太が、毎回オススメの季語と俳句を紹介していくこのコーナー。俳人の観点で解説する、俳句にまつわるキーワードにも注目です!

第8回 今日の季語「冬の星」(冬)

ことごとく未踏なりけり冬の星

(ことごとく みとうなりけり ふゆのほし)

髙柳克弘(たかやなぎかつひろ)

ロマンのまま楽しむ

空気が澄むと、星が見えやすくなります。一面に広がる星空を見上げ、作者はそのほとんどの星に人間が足を踏み入れたことがないという事実に思いをはせます。この句を読む読者も、同じように未知の世界へと誘われていくのではないでしょうか?

宇宙への疑問は、夢や冒険心に満ちあふれたロマン的な雰囲気を持っています。知りえないあの星には何があるのか? 宇宙人はいるのか? 寒いのか、暑いのか? どれくらい遠くにあるのか? などなど。

一方で、この句には、こうした疑問に答えるという積極的な姿勢はありません。「いま見ている星のことって、ほとんどわかってないんだよなぁ」と言っているだけ。ですが、私はこうした作者の態度に、ロマンをロマンとして楽しむ心を感じます。謎のままにしておくからこそ、宇宙は魅力的であり、遠くの星がもつきらめきに特別な感情を重ねることができるのかもしれません。

俳句のキーワード 「季語」

「季語」とは、俳句の中の季節を決めるための言葉です。多くの俳句は、季語を一つ入れて、作品となっていきます。

四季がある日本では、人々が季語のイメージを共有しています。例えば「桜」。桜と言われると、冬から春へ移った暖かい雰囲気、満開のときの華やかさ、散りゆくときのはかなさなど、様々なイメージを思い浮かべます。俳句は、こうした共通のイメージを手がかりにして、短いながらに豊かな作品世界を作り出しています。

地域には特有の季語があります。また、昨今の温暖化はいずれ「夏」を長くさせるかもしれません。これまで季語とされていたものの実感がなくなったり、新しい季語が発見されたりすることもあります。

季語とは、私たちの「あたりまえ」に依存しながら、「あたりまえ」の違いやその変化を映し出すものとして捉えることもできます。さらに言えば、季語の使い方を工夫することによって、「あたりまえ」を揺さぶることができることさえあるのです。

中西亮太の「学研の俳句おにいさんが解説 読解力が伸びる! 親子で味わう俳句」は、第1・第3水曜にお届けします! 次回もお楽しみに♪


中西亮太(なかにし りょうた)

1992年生まれ。株式会社学研プラスの編集者。大学生のとき、甘い考えでうかつに俳句をはじめる。過去に、第14回龍谷大学青春俳句大賞最優秀賞、NHK-Eテレ「俳句王国がゆく」出演など。「艀」(終刊)を経て、「円座」「秋草」現代俳句協会所属。俳句とは広く浅く長く付き合いたいと思っている。冬の作品に〈校庭のぽんと明るし雪達磨〉。

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