不登校からの学校復帰をスムーズにするために 前編
あかはなそえじ先生の院内学級の教師として学んだこと「第75回」
院内学級の教師として、赤鼻のピエロとしてかかわるなかで、笑顔を取り戻し、治療に向かう意欲を高めていく子どもたち。その経験をもとに、子どもとの接し方や保護者・家族とのかかわり方、院内学級の必要性、教育の重要性などについて語ってくれます。
退院したけど学校に行きたくないなぁ
ある日、小学生の男の子の退院が決まり、院内学級の教室に来てくれたその子と話をしていたときのことです。
「退院が決まってよかったね。明日から学校にも行けるよね」と私が言うと、その子が「学校、行きたくないなぁ」と、つぶやくように言いました。私は「そうかぁ、学校に行きたくないかぁ」と、返事をしました。
退院前、学校にもどることを不安に思う子どもたちは、とっても多いのです。うれしい気持ちと不安な気持ちが、ぐるぐる回っているのが伝わってきます。
ただ、それは当然のことですよね。かぜをひいて2、3日休んだだけでも、学校に行くときにはドキドキしたり、不安になったり。それを2週間とか、3週間、1か月とか休むわけですから。そのドキドキも、不安も、しだいに大きくなっていくことでしょう。
その男の子になかにも、いろいろな感情があるのだろうと感じました。
ところが次の日、教室に来てくれたその子の感じが、前日とはまるでちがっていました。何かあったのかなと思っていたところ、「先生、早く学校に行きたい!」と言いました。表情も、声も、とっても明るく変わっていました。
「どうして、そう思うようになったの?」と、私が聞いてみると、ニコニコしながら答えてくれました。
「昨日ね、担任の先生が病室に来てくれたんだ。ぼくがもうすぐ学校にもどって来るって、クラスのみんながさわいでいるんだって」
本当にうれしそうでしたから、私も幸せな気持ちになりました。
前日の夕方に担任の先生がお見まいに来てくれたことで、学校にもどることへの不安が一気になくなったわけです。私は担任の先生に、本当に感謝しました。
関係者会議は開かれたが
病気が重い状態だったお子さんや、メディカルとつながらないと生きていくことが難しいお子さんが退院するときには、3、4年ほど前から関係者会議を開くことになりました。15年前ぐらいに比べると、関係者会議を開くことがあたりまえのようになってきて、みなさんいそがしいはずなのに、本当にありがたいことだと思います。
あるとき、中学生の女の子の退院が決まりました。学校での生活上、ケアが必要なお子さんでしたので、もちろん関係者会議が開かれました。
病院側から主治医である小児科医と、病院の担当ナース、医療保育士、院内学級の私。学校側から校長先生、保健室の先生、担任の先生、お母さんと本人が参加し、退院に向けてのお話をしたわけです。
この席で、主治医の先生が校長先生に言いました。
「校長先生、このお子さんは、水分をとらないと危険な状態になることがありますので、申し訳ありませんが、たとえ授業中でも水分をとることを許可していただけますか?」
校長先生は「もちろんいいですよ。先生方にもお願いしておきます。お母さん、水とうを持たせてくださいね」と言ってくれました。
でも、みなさんはどう思いますか? もし、自分が当人だったら、授業中、自分だけ水とうを出して水分をとることができますか。
果たしてこの女の子はスムーズに学校復帰できたのでしょうか。次回のお話で、その続きをお伝えします。
Information
「あかはなそえじ先生のひとりじゃないよ」
四六判・全248ページ
1400円+税
学研教育みらい刊