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コラム・マンガ

不登校からの学校復帰をスムーズにするために 後編

不登校からの学校復帰をスムーズにするために 後編

あかはなそえじ先生の院内学級の教師として学んだこと「第76回」

院内学級の教師として、赤鼻のピエロとしてかかわるなかで、笑顔を取り戻し、治療に向かう意欲を高めていく子どもたち。その経験をもとに、子どもとの接し方や保護者・家族とのかかわり方、院内学級の必要性、教育の重要性などについて語ってくれます。 

関係者会議での依頼

前回の続きです(こちら)。

水分をとらないと危険な状態になることがある中学生の女の子の退院が決まって、関係者会議が開かれ、主治医が校長先生に「授業中でも水を飲めるよう」申し出て、校長先生もこころよく許してくれました。が、当人はどうでしょう。

そのお子さんとは、小学校の低学年からの付き合いです。この子が、授業中に自分だけ水とうを出して水を飲めるような子ではないことを知っていましたから、私が校長先生にお願いをしてみました。

「じつは、このお子さんは、自分だけ水とうを出して水分をとることがとても苦手なお子さんなので、申し訳ありませんが、そのようなときは、クラスのみんなにも水とうを持ってきてもらい、水飲みタイムなどをつくるようなケアはできませんでしょうか?」

もちろん、このことが大変に難しいことであることは、私もわかっていました。でも、このお子さんが水分をとることができるよう、クラスのみんながそれをあたりまえだと思えるようにする、そんな力を育てていくことが大切なのではないかと思ったのです。

退院する子どもを受け入れることについて、そのお子さんに少しでもケアができたたらと思い、お願いをしてみたわけです。

しかし、校長先生の返答は「おわかりだと思いますが、このお子さんはご病気ですから、特別サポートということです。でも、ほかの子どもたちは病気ではありませんので、それはできません」とのことでした。

私が、うーん、どうしたらいいのか、と考えていたとき、主治医の先生が「ちゃんと飲まなければダメだよ。ちゃんと飲むんだよ」と言うと、その子が「はい」と返事をしました。

いいの、別に。飲まないから

私は会議が終わったところで、彼女が本当に飲めるのかどうか心配でしたから、小声で「本当にちゃんと飲める?」と聞くと、彼女はきっぱりと「いいの、別に。飲まないから」と言いました。

そうだよね、飲まないよね。

病院側は学校に伝え、学校側も了解しました。保護者にも確認をとり、本人も「はい」と言いました。このような会議がいまだに行われているのではないでしょうか。

みんな、わかっているはずです。この子が授業中に水とうを出して水分をとることが、たぶん難しいことを。はたして、これがスムーズな学校復帰につながるのでしょうか。

一人ひとりにそこまでケアをしていたら、大変だということは理解しています。ですが、ただ会議や話し合いをもてたことでよしとするのではなく、全員の中にあった納得できていない感情を、もっと大切にしていきたいと思うのです。

ほんのちょっとした意識や行動の変化で、学校がみんなにとって、もっとよりよい場所になれるように、と願います。すべての子どもがあきらめることのない世界、そんな場所をつくり出すために社会や大人たちができることは何でしょうか。

これからも一つひとつ、取り組んでいきたいと思います。

Information

「あかはなそえじ先生のひとりじゃないよ」
四六判・全248ページ
1400円+税
学研教育みらい刊

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あかはなそえじ先生・副島賢和(そえじま まさかず)

筆者:あかはなそえじ先生・副島賢和(そえじま まさかず)

昭和大学大学院保健医療学研究科准教授、昭和大学附属病院内学級担当 1966年、福岡県生まれ。東京都の公立小学校教諭を25年間務め、 1999年に都の派遣研修で東京学芸大学大学院にて心理学を学ぶ。 2006年より品川区立清水台小学校教諭・昭和大学病院内さいかち学級担任。2009年ドラマ『赤鼻のセンセイ』(日本テレビ)のモチーフとなる。2011年『プロフェッショナル 仕事の流儀「涙も笑いも、力になる」』(NHK総合)出演。2014年より現職。学校心理士スーパーバイザー。ホスピタルクラウンとしても活動中。

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