院内学級での教育~準ずる(じゅんずる)教育ってどういうこと?・1
あかはなそえじ先生の院内学級の教師として学んだこと「第78回」
院内学級の教師として、赤鼻のピエロとしてかかわるなかで、笑顔を取り戻し、治療に向かう意欲を高めていく子どもたち。その経験をもとに、子どもとの接し方や保護者・家族とのかかわり方、院内学級の必要性、教育の重要性などについて語ってくれます。
院内学級って全国にどれくらいあるの?
ここ数年、小学校や中学校、高等学校、大学、市民講座などで、院内学級でのかかわりについてお話をさせていただく機会が増えました。
小学校、中学校では、まだ「院内学級って何?」と質問されることも多いのですが、しっかりわかるように「病院の中にある学校。病気やけがで入院している子どもたちと、学習をしたり、遊んだりするところだよ」と答えています。
じつは、「院内学級」には「病弱・虚弱特別支援学校(びょうじゃく・きょじゃくとくべつしえんがっこう)」という正式名称があります。
※【院内学級とは、学校教育法第31条第3項の規定「前項に掲げる学校においては、疾病により療養中の児童及び生徒に対して、特別支援学級を設け、又は教員を派遣して、教育を行うことができる。」に基づいて病院内に設置される病弱・虚弱の特別支援学級をいう。】
数年前は、教員の研修会などで話をするとき、先生方に「院内学級はご存じですか?」と質問をすると「名称や役割などは知っていますが、実際のところ、どのようなことをされているのでしょうか?」と、逆に質問されることが多々ありました。
入院している子どもだけではない病弱教育
「病弱教育を担っている学校・学級」が「院内学級」というわけではありません。長期間にわたる病気をかかえていたり、メディカルケアが必要だったりするすべての子どもが、入院をしているわけではないからです。
病気をかかえた子どもたちのうち、入院をしているのは約2割。あとの8割は自宅で病気を治していたり、学校に通ったりしています。そのようなお子さんに対する教育も「病弱・虚弱教育」なのです。
【全国の特別支援学級数 66,655(うち病弱・虚弱の特別支援学級数 2,518)
全国の学級在籍者数 302,473名(うち病弱・虚弱学級在籍者数 4,312名)】
(令和2年度調査 学校基本統計より)
*自閉症、情緒障害、言語障害、難聴、弱視、肢体不自由、知的障がいも含む
増える特別学校とその課題
病弱・虚弱の特別支援学級の全国における数は、じつは年々増えています。ということは、病気をかかえた子どもたちが増えているともいえます。昔に比べて、20さい未満の子どもたちの死亡数が大きく減ったことも関係しているのではないでしょうか。
それでも、多様な困難をかかえる子どもたちが、安心して教育を受けられるようになったことは本当にすばらしいことです。
※【令和3年度全国病弱・虚弱教育施設数(全病連調べ) *( )内は平成26年度の数字
●小学校 病弱・虚弱特別支援学級 2,880(978)
●小学校 院内学級・分校 253(163)
★中学校 病弱・虚弱特別支援学級 1,287(398)
★中学校 院内学級・分校 155(109)
上記の数字は、全国病弱虚弱教育研究連盟(全病連)の調査による、令和3年度の全国の病弱・虚弱教育施設の数です】
平成26年度と令和3年度を比べてみると、とても増えていることがわかります。病院の中にある院内学級も、中学校は若干ですが、増えております。
ただ、これには地域差があるのです。
地域差とはいったいどのようなものだと思いますか? 次回はその点についてお話していきます。
Information
「あかはなそえじ先生のひとりじゃないよ」
四六判・全248ページ
1400円+税
学研教育みらい刊