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コラム・マンガ

院内学級の教育 【どうやってかかわればいい?】 前編

院内学級の教育 【どうやってかかわればいい?】 前編

あかはなそえじ先生の院内学級の教師として学んだこと「第80回」

院内学級の教師として、赤鼻のピエロとしてかかわるなかで、笑顔を取り戻し、治療に向かう意欲を高めていく子どもたち。その経験をもとに、子どもとの接し方や保護者・家族とのかかわり方、院内学級の必要性、教育の重要性などについて語ってくれます。 

あかはな先生のおなやみ相談室

「この内容はいつやればよいですか?」 

講演会などで先生方からこのような質問を受けたとき、新聞やラジオの人生相談の回答ように、ビシッと伝えることはなかなかできませんが、なるべく「私はこのように考えています」ということは、しっかり返事をできるようにしたいと思っています。

たとえば、「授業などで、子どもたちに季節に合った映像を見せたいのですが、今日よりも来週のほうがいいかと思うのですが、いつだったらよいのでしょうか」と聞かれたとき、どうしましょう。

教材や授業する時期を選ぶときは、あらゆる条件を考えるでしょう。この内容なら今日か、明日か、来週か、はたまた1か月後か。

私は聞かれて「そうですね。季節のことを考えると、来週のほうがしっくりくるかもしれませんね。でも、今日でよいのではないでしょうか」とお伝えしました。

「明日でいいや」はやめます

入院中の子どもたちといっしょにいて、考えたことがありました。

それは「これはやったほうがよいのかな、これをやってみたいな、と思ったことは、できるだけそのときにやりましょう」ということ。

小学校の教員時代、年単位で子どもたちとかかわることができたときには、単元の内容や行事とのかね合いなどから、できることの優先順位を決めていました。もちろん、院内学級においても、そのことは大切に考えています。

それでも、明日の健康状態を心配する子どもたちとの出会いや、後回しにしたことでくやしさが残る経験を重ねてくると、

「今、本当にやらなければいけないことはいったいなんだろう」
「このお子さんにとって、この院内学級に来てくれた子どもたちにとって、本当に大切なことはなんだろう」

と、より本気で考えるようになりました。

入院中の子どもたちのことですから、急に具合が悪くなったり、痛みが出たり、エネルギーが足りなくなったり、検査や処置があったりします。したがって、計画を立てていたことや準備をしてきたことが、実行できないこともたくさんあります。教室に来てくれても、1時間の中で状態が大きく変わることだってあるのです。

そのため、取り組ませたいことがあっても、そのときにできないこともたくさんあります。そのとき、そのときの子どもたちの状態を考えながら対応するのですが、本当にこれでよかったのか、自身の判断になやむことも多々ありました。

「子どもたちへのかかわりは、まちがっていないでしょうか?」
「こんなときには、どうやってかかわればよかったのでしょうか?」

このような質問もたくさんいただきます。困ったとき、不安になったとき、相談できる人や、相談できる場所がないのは大変なことだと思います。

今でこそ、院内学級という名を知ってくれている方も多くなりましたが、以前は、院内学級で行われている教育についてしっかり説明できる人も少なく、教育関係者でもそう多くはいませんでした。

そうなると、異動で院内学級に来られる先生は、院内学級のことをどこで学べばよいのでしょうか。院内学級に通うお子さんがおられる保護者の方もぜひ考えてみてほしいです。

後編では、日本各地の院内学級での取り組みを集めたデータバンクをお伝えします。院内学級で何をどうすればよいのか、どことつながっていけばよいのかなど、ぜひ参考にしてみてくださいね。

Information

「あかはなそえじ先生のひとりじゃないよ」
四六判・全248ページ
1400円+税
学研教育みらい刊

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あかはなそえじ先生・副島賢和(そえじま まさかず)

筆者:あかはなそえじ先生・副島賢和(そえじま まさかず)

昭和大学大学院保健医療学研究科准教授、昭和大学附属病院内学級担当 1966年、福岡県生まれ。東京都の公立小学校教諭を25年間務め、 1999年に都の派遣研修で東京学芸大学大学院にて心理学を学ぶ。 2006年より品川区立清水台小学校教諭・昭和大学病院内さいかち学級担任。2009年ドラマ『赤鼻のセンセイ』(日本テレビ)のモチーフとなる。2011年『プロフェッショナル 仕事の流儀「涙も笑いも、力になる」』(NHK総合)出演。2014年より現職。学校心理士スーパーバイザー。ホスピタルクラウンとしても活動中。

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