院内学級での教育~準ずる(じゅんずる)教育ってどういうこと?・2
あかはなそえじ先生の院内学級の教師として学んだこと「第79回」
院内学級の教師として、赤鼻のピエロとしてかかわるなかで、笑顔を取り戻し、治療に向かう意欲を高めていく子どもたち。その経験をもとに、子どもとの接し方や保護者・家族とのかかわり方、院内学級の必要性、教育の重要性などについて語ってくれます。
特別学校にみられる地域の差
前回は「院内学級ってそもそも何?」ということについてお話してきました(こちら)。
そして、平成26年度と令和3年度を比べてみると、特別学校はとても増えていることがわかりました。病院の中にある院内学級も、中学校はわずかですが、増えております。
※【令和3年度全国病弱・虚弱教育施設数(全病連調べ) *( )内は平成26年度の数字
●小学校 病弱・虚弱特別支援学級 2,880(978)
●小学校 院内学級・分校 253(163)
★中学校 病弱・虚弱特別支援学級 1,287(398)
★中学校 院内学級・分校 155(109)】
ただ、これには地域差があるということでしたが、一体どういうことでしょうか。
全国的に院内学級は増えているのですが、首都近辺や地方都市などでは少々減っている流れがあります。それぞれの地域の実態に合わせた対策だと思います。ですが、まだまだ入院をしている子どもたちすべての教育保障ができているわけではありません。とくに数値として実態をつかみにくいのが高校生です。
公立高校の場合、転校手続きをとって教育を受けている生徒もいます。しかし、病院によっては、高校生の年になると成人病院に入院することが多く、院内学級の先生方も実態をつかむことができていない場合があります。
また、私立の高校に通っているお子さんの場合、公立の特別学校等への転校や、治ったときの私立校への復帰等、ケアで難しいことが多いため、「それだったら、自分で勉強したほうが早いです」という高校生も多く出てくるわけです。
また、私がいる病院でも、小学生や中学生のときに院内学級に通った経験のある子どもたちは、高校生になって再入院してきたときも顔を出してくれますが、初めての入院となる高校生たちは、当然といえば当然ですが、声をかけてみても、学級に通ってもらうまでになることはなかなか難しいです。
準ずる(じゅんずる)教育
「院内学級では、具体的にどのような教育をされているのですか?」という質問も、多くいただきます。以前、ある先生から「あかはな先生の学級では、勉強はしないのでしょう」と言われて、とてもおどろいたこともありました。
そういうときは「もちろん、学習をすることが大前提です。院内学級は学びの保障をするところですから。ただし、児童生徒の実態に応じてのことです」とお伝えします。
いわゆる「院内学級」で行っている教育は、「準ずる教育」と言われているものです。
特別支援教育の指導要領において、「各教科・道徳および特別活動・授業時数等」の項目に、「準ずる」という言葉があります。「児童生徒の実態に応じて、適切に定める」と書いてあります。
そのため、私たち病弱・虚弱教育を担う教員は、「自立活動」など特別支援教育の指導要領に基づいた教育を行うことは当然のこと。あわせて、子どもたちが退院後に通う学校の指導要領についても、精通している必要があるのです。
病弱・虚弱特別支援教育や特別支援学校等にかんする詳細は、各自治体に問い合わせてみることをおすすめします。
Information
「あかはなそえじ先生のひとりじゃないよ」
四六判・全248ページ
1400円+税
学研教育みらい刊