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コラム・マンガ

いろいろな形の学びを用意する・1

いろいろな形の学びを用意する・1

あかはなそえじ先生の院内学級の教師として学んだこと「第82回」

院内学級の教師として、赤鼻のピエロとしてかかわるなかで、笑顔を取り戻し、治療に向かう意欲を高めていく子どもたち。その経験をもとに、子どもとの接し方や保護者・家族とのかかわり方、院内学級の必要性、教育の重要性などについて語ってくれます。 

院内学級での教育は必要か?

「入院をしている子どもたちに教育は必要なのでしょうか」

こう聞かれたら、みなさんならなんと答えますか? 多くの大人、とくに教師たちは言います。「やはり必要でしょう。勉強は大切ですから。将来のこともありますしね。たとえ病気であっても、障がいがあっても、教育は大切です」と。

ですが、じっさいに入院をしている子どもたちを前にすると、言うことが変わってきます。

「早く治さないとね。勉強なんか健康になったときにやればいい。今は病気を治すことに集中することがまず先だよ」と。

ある先生から「たった数日の入院先で、何ができるの?」と言われたことがあります。

何度も書きましたが、10さいから15さいまでのお子さんたちの平均在院日数は約10日間。もちろん、長い入院や入退院を何度もくり返す子どもたちもいますが、医学の進歩や厚生労働省の方針などから、昔と比べると入院期間はとても短くなりました。

ただ、退院をして家に帰ることができても、まだ学校に通うことができない子どもたちもいるのです。

子どもたちのエネルギーを考える

「こんなときに勉強しなくてもいいから、治療をしっかりやってね」

たしかに、入院する一番の目的は病気を治すことです。1日でも早く治ってもらうためには、集中して取り組んでもらいたいと強く思います。そのためには多くのエネルギーを必要としますが、エネルギーがなくなっている子どもたちもいます。

「元気になったら、また学級においでね。先生もみんなも待っているから」

この言葉にウソはありません。本気で「待っている」と思います。しかし、医療とつながっていないと生活できない子どもたちが増えています。

「みんなと同じようにできないと」
「元気で健康にならないと」

「学校には行けない」
「勉強もしてはいけない」
と思ってしまう子どもたちもいます。

このような子どもたちに、治療に向かい、生きていくためのエネルギーをためてもらうには、どうすればよいのか、何をすることができるのか、院内学級の担任として日々、考えています。

院内学級の役目はなんだろう?

病弱教育の役目のひとつは、子どもたちの入院中や病気を治す最中の、勉強のおくれをカバーすることですが、それだけを目的にしてしまうのは少しちがうと思います。

2011年1月に、NHK総合テレビで放送された、院内学級をテーマにしたドキュメンタリー番組

『プロフェッショナル 仕事の流儀「涙も笑いも、力になる」』を視聴していただいた先生から

「そえじま先生の学級では、あまり勉強はしないのでしょう」と言われたことがありました。「そんなことはありませんよ。勉強をすることは当たり前のことですから」と答えました。

じつは、このドキュメンタリー番組のスタッフやディレクターさんは

“病院の中にある学校では、子どもたちの勉強以外にも大きな役割がある”

ということを、取り上げてくださったのでした。

病気をかかえる子どもが、エネルギーをためるためにはどんな日常を過ごすことが大切だと思いますか? ぜひいっしょに考えてみましょう。このお話の続きは次回に。

Information

「あかはなそえじ先生のひとりじゃないよ」
四六判・全248ページ
1400円+税
学研教育みらい刊

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あかはなそえじ先生・副島賢和(そえじま まさかず)

筆者:あかはなそえじ先生・副島賢和(そえじま まさかず)

昭和大学大学院保健医療学研究科准教授、昭和大学附属病院内学級担当 1966年、福岡県生まれ。東京都の公立小学校教諭を25年間務め、 1999年に都の派遣研修で東京学芸大学大学院にて心理学を学ぶ。 2006年より品川区立清水台小学校教諭・昭和大学病院内さいかち学級担任。2009年ドラマ『赤鼻のセンセイ』(日本テレビ)のモチーフとなる。2011年『プロフェッショナル 仕事の流儀「涙も笑いも、力になる」』(NHK総合)出演。2014年より現職。学校心理士スーパーバイザー。ホスピタルクラウンとしても活動中。

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