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コラム・マンガ

きょうだい児に必要なケア【後編】~元気そうでよかった~

きょうだい児に必要なケア【後編】~元気そうでよかった~

あかはなそえじ先生の院内学級の教師として学んだこと「第87回」

院内学級の教師として、赤鼻のピエロとしてかかわるなかで、笑顔を取り戻し、治療に向かう意欲を高めていく子どもたち。その経験をもとに、子どもとの接し方や保護者・家族とのかかわり方、院内学級の必要性、教育の重要性などについて語ってくれます。 

おたがいに心配しあう姿 

前回の続きです(こちら)。

病院にたのんで、家族やきょうだいも来ることができた学習発表会の後、集まったみんなでボードゲームをしました。久しぶりに会うことができたからでしょうか。あまり目立った会話はなかったのですが、さすがにきょうだいですね。あうんの呼吸で、楽しそうに遊んでいました。時間がきて、お別れをし、病棟にもどったとき、あるお子さんが笑顔で言いました。

「久しぶりに会えた、元気そうでよかった」

病気で入院をしているのは自分なのに、きょうだいのことをとても心配しているのだと思いました。

感染のことも考え、ドクターや看護師長から許可を得ながら行ったことなので、毎回というわけではありませんが、少しでも家族やきょうだいと関係がつながっていることを、感じられるような場面をもつことができたらと思い、当時はいっしょうけんめいに取り組んでいました。

きょうだいの「学校しぶり」の理由

入退院をくりかえしていた小学校中学年の女の子がいました。病気の状態は、波のように変化をします。その女の子には、小学校低学年のきょうだいがいました。本人たちも、ご家族も、仲の良い関係だったのでしょう。病室のベッドのまくら元に、みんなで撮影(さつえい)した写真がかざられていました。

ある日、その子のお母さんから相談されました。低学年のお子さんが学校に行きしぶっているというのです。登校しても身体の不調をうったえ、保健室に行く回数がだんだんと増えたようですが、相談されたときには、学校に行くことさえいやがり、毎日、学校までお母さんが送っていくことで、どうにか登校しているということでした。

がんばって登校しても、やはり、保健室で過ごしている時間のほうが多いというのです。熱があるわけでもなく、理由を聞かれてもわからないというお話でした。

お姉ちゃんが入院して、家の中がこれまでの状態とはちがうことを感じていたのでしょう。保護者の不安や心配が伝わっていたのかもしれません。本人にとって、心配で、不安で、学校に行っている場合ではなかったのかもしれません。

そこで、その低学年のお子さんにとってのリソースが学校の中にないだろうかと考え、お母さんに話をしたところ、スクールカウンセラーの方と話ができそうだということがわかり、学校の管理職や担任のサポートもあってお話をする機会ができました。

その後も、「様子はいかがですか?」と学校側と多くの情報交換を行い、低学年のお子さんは少しずつエネルギーを取りもどして、登校しぶりがなくなっていったのです。

その間は、ご家族にもかかわる時間をしっかりもっていただき、病院で待っているときは、病棟のスタッフさんにもたくさん声がけしていただき、私たちもいっしょにごはんを食べたり、放課後の院内学級で過ごしたりしました。

どんなに小さなお子さんでも、家族の一員として自分にできることを最大限にがんばっています。自分のことは後回しにして気持ちを伝えず、じっとがまんをしているお子さんの姿も見られました。病気になったお子さんに、親をひとりじめされているように感じてしまうお子さんもいます。

特に、ごきょうだいが亡くなられた場合の心理的なストレスは計りしれないものがあります。それらの「傷つき」が後の不適応行動につながることもあります。

だからこそ、家族やきょうだいのケアも発達段階に応じて行っていく必要があるのです。

Information

「あかはなそえじ先生のひとりじゃないよ」
四六判・全248ページ
1400円+税
学研教育みらい刊

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あかはなそえじ先生・副島賢和(そえじま まさかず)

筆者:あかはなそえじ先生・副島賢和(そえじま まさかず)

昭和大学大学院保健医療学研究科准教授、昭和大学附属病院内学級担当 1966年、福岡県生まれ。東京都の公立小学校教諭を25年間務め、 1999年に都の派遣研修で東京学芸大学大学院にて心理学を学ぶ。 2006年より品川区立清水台小学校教諭・昭和大学病院内さいかち学級担任。2009年ドラマ『赤鼻のセンセイ』(日本テレビ)のモチーフとなる。2011年『プロフェッショナル 仕事の流儀「涙も笑いも、力になる」』(NHK総合)出演。2014年より現職。学校心理士スーパーバイザー。ホスピタルクラウンとしても活動中。

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