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コラム・マンガ

いのちの授業をするときに【前編】

いのちの授業をするときに【前編】

あかはなそえじ先生の院内学級の教師として学んだこと「第88回」

院内学級の教師として、赤鼻のピエロとしてかかわるなかで、笑顔を取り戻し、治療に向かう意欲を高めていく子どもたち。その経験をもとに、子どもとの接し方や保護者・家族とのかかわり方、院内学級の必要性、教育の重要性などについて語ってくれます。 

話は聞いてほしいけれど

ここ5、6年の間に「道徳授業地区公開講座」や「いのちの授業」などで、子どもたちや保護者、先生方にお話をする機会が増えました。

「いのちの授業」では「いのちの大切さを伝えてください」というテーマが多いです。

いじめや自死の防止として「相手の立場に立つことの大切さを語ってください」とか、人権教育として「自他の大切さについて話をしてください」とか、そういったお願いが多くあります。

東京オリンピック・パラリンピックのときには、五輪の教育推進に向けたとりくみとして「障がい者への理解について話をしてほしい」ともお願いされました。

私が出会う子どもたちの多くは、障がいや病気をかかえているお子さんたちです。

その視点から、聞いてくださる子どもたちや保護者、先生方に、どのように話をすればより伝わるのかを考えながら、用意された時間内で講演や授業を組み立てていきます。

小学校の担任時代にも、これらのテーマに関することは、ずっと考えて学級を経営してきましたが、これは本当に難しいことです。父親としてわが子に伝えることでさえ、簡単ではないと感じていました。

苦しいのは大人も子どもも同じ

講演や授業をさせていただくとき、関係者の方に、事前にお願いをしていることが2点あります。

1点目は「ここ最近、大切な方を失ったお子さんや、保護者の方、先生方はいらっしゃいますか? いらしたら教えてください」ということ。

ご両親やきょうだいが亡くなられることはあまりないのですが、祖父や祖母が亡くなられたり、家族や親類の方が亡くなられたり、また友人が入院をしたとか、離婚(りこん)や転居などで環境(かんきょう)が変わったこととかはわりとあるため、事前に聞いておく必要があるのです。

私の話の中には、病気の話や亡くなられたお子さんの話もふくまれています。

最近、そのような経験をされた方がいたり、身近な方が病気などで苦しんだりしていた場合、話の内容や、内容の程度を変える必要があると考えています。

たしかに大切で必要な話をするわけで、皆さんにぜひ聞いてもらいたい内容なのですが、悲しい思いをされている方々に、いきなりこのような話をぶつけることは、ある意味、暴力だと思うのです。

そのため、授業中でも子どもたちに「今日の先生の話の中で、しんどい話が出てくるかもしれません。もしも“今、この話を聞くことはつらい”と感じたら、目を閉じてください。耳をふさいでもいいですよ。それでも“やっぱり苦しくて、しんどいな”と思ったら、周りの先生に伝えて、ろうかに出ていてもよいです」と伝えます。

先生や保護者の方にも伝えます。「今日はそんな話を聞く状態ではないと感じたり、思ったりしたら、上手にねたふりをしてください」と。

苦しいのは大人も子どもも同じなのです。

後編では、いのちの授業の前と後で大切にしている子どもや保護者のみなさんとの関わりについて、お伝えしたいと思います。それではまた。

Information

「あかはなそえじ先生のひとりじゃないよ」
四六判・全248ページ
1400円+税
学研教育みらい刊

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あかはなそえじ先生・副島賢和(そえじま まさかず)

筆者:あかはなそえじ先生・副島賢和(そえじま まさかず)

昭和大学大学院保健医療学研究科准教授、昭和大学附属病院内学級担当 1966年、福岡県生まれ。東京都の公立小学校教諭を25年間務め、 1999年に都の派遣研修で東京学芸大学大学院にて心理学を学ぶ。 2006年より品川区立清水台小学校教諭・昭和大学病院内さいかち学級担任。2009年ドラマ『赤鼻のセンセイ』(日本テレビ)のモチーフとなる。2011年『プロフェッショナル 仕事の流儀「涙も笑いも、力になる」』(NHK総合)出演。2014年より現職。学校心理士スーパーバイザー。ホスピタルクラウンとしても活動中。

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