子どもの行動には理由がある~感情や考えを想像する~前編
あかはなそえじ先生の院内学級の教師として学んだこと「第93回」
院内学級の教師として、赤鼻のピエロとしてかかわるなかで、笑顔を取り戻し、治療に向かう意欲を高めていく子どもたち。その経験をもとに、子どもとの接し方や保護者・家族とのかかわり方、院内学級の必要性、教育の重要性などについて語ってくれます。
大人が言語化してあげる
院内学級に関わってくれている先生とお話をしているなかで、あるお子さんの話題になりました。
「最近、集中できないようで。勉強をやる気もあまりないようです」と言うので、
「入院が長くなって、限界がきているのかなぁ」と伝えたところ、
先生が「当然かもしれませんね。やっと手術の日が決まったみたいです」と教えてくれました。
手術の日がなかなか決まらず、湧(わ)いてきたその子の不安をしっかりと受け止めてくださった先生は、本当にすてきだなぁと思いました。
子どもたちが、自分の状態や感情をじょうずに言葉にできることは、そう多くはありません。もちろん学校は、自分の思いや願いを言葉にする「学び」をする場所です。
でも、つらかったり、苦しかったり、しんどかったりするほど、子どもたちはなかなか言葉にすることができないのです。そして、行動化や身体化(しんたいか)してしまうようです。
私たち大人は「気持ちや自分の考えを言葉にすることは大切だ」と考えていますから、子どもたちについつい、言語化を求めてしまいます。ただ、子どもたちがうまく言葉にできないときに、「言葉で言いなさい」と求めても、なかなか言葉は返ってこないでしょう。
それよりも、そのお子さんの表情や行動から感情を読み取って、それを大人側が言葉にしてあげることが大切になってくるのではないでしょうか。
「悲しいのかな」「つらそうだね」「いやだったね」「イライラするよね」
その言葉がヒットすると、子どもたちの表情や行動に変化が現れます。表情がやわらいだり、安心した気持ちになったり、落ち着きが見られたりします。うまくヒットしないときには、表情がなくなったり、行動が激しくなったり、あきらめてしまったりするのです。
子どもの表情や行動から、彼(かれ)らの感情を読み取る力はとっても大切であると思います。
「いい子すぎて、逆に心配」
高学年の女の子を担当している看護師さんから、相談をされました。
「先生、あの子、本当にいい子すぎて、逆に心配なのですが」
確かにそのお子さんは、言われたことをしっかりと守ります。それどころか、周りの要求を察して負担をかけないよう過ごしているように見えました。
病気を抱(かか)えている子どもたちの中には、病気になったことや、入院をしたことで、周りに心配をかけてしまっていると考えている子がいます。場合によっては「もうこれ以上、迷惑(めいわく)をかけられないの」と伝えてくるお子さんもいます。
病院のスタッフが仕事をする上では、迷惑がかからないよい子はとっても助かると思いますが、よい子すぎることに引っかかりを感じて相談をしてくれた看護師さんは、本当にさすがだなぁと思いました。
「ふだんの生活のなかでならよいのでしょうが、具合が悪くて入院をしている状況(じょうきょう)でも、そのような様子だということは、ちょっと心配になってきます」と、教えてくれました。
病院の中では、基本的に「受け身」であることを求められます。
患者さんなのですから医療関係者の言うことを聞いて、1日でも早く回復することが優先順位の第1位ですから、当然のことなのですが……。
子どもの気持ちを大人が言葉にしてあげる大切さをお伝えしました。後編では、「子どもたちの気持ちをどのようにすれば理解できるのか」について詳しくお話していきます。ではまた。
Information
「あかはなそえじ先生のひとりじゃないよ」
四六判・全248ページ
1400円+税
学研教育みらい刊