学ぶことは生きること~子どもの力を信じる①
あかはなそえじ先生の院内学級の教師として学んだこと「第99回」
院内学級の教師として、赤鼻のピエロとしてかかわるなかで、笑顔を取り戻し、治療に向かう意欲を高めていく子どもたち。その経験をもとに、子どもとの接し方や保護者・家族とのかかわり方、院内学級の必要性、教育の重要性などについて語ってくれます。
──子どもたちがもつ力を発揮してもらうために、我々大人、保護者や教員ができることについて、考えてみました。
「お役に立てれば、喜んで」
そのお子さんは、頭の奥(おく)のほうにおできができていて、担当のお医者さんからは「もう触(さわ)ることができません」と言われていました。
そのため、「調子がよいときは家で過ごしましょうね。具合が悪くなったら、また病院においでね」と言われた女の子です。
当分の間、自宅で療養(りょうよう)していたのですが、体調をくずして再入院してきました。
彼女は病室から出てはいけなかったため、私たち院内学級の教師が毎日、勉強の道具や遊び道具を持ってベッドサイドまで行き、学習の保障をおこなっていました。
そんなある日のこと、看護師さんから「ドクターから教室に行く許可がいただけましたよ!」と、教室に連絡(れんらく)があったのです。
──さぁて、いっしょに何をしようか──
彼女は絵を描(か)くことが大好きでした。そこで、図工の時間に来てもらえるよう、検査や治療の時間を調整してもらいました。
そうだ! 虹(にじ)の絵を描こう。テーマを「虹」にしました。
実は、たくさんの絵を用意して工作をする予定にしていたのですが、学習の内容は子どもたちの状態に合わせて、どんどん変わっていきます。
彼女に「どっちの大きさの紙にする?」と聞くと、大きい画用紙を選び、クレパスを使って、虹がかかる空の絵を一生懸命(いっしょうけんめい)に描いてくれました。
ただ、描いている手は細く、震(ふる)えていました。頭も揺(ゆ)れるときがありました。自分で体を支えることがつらくなってきたようなので、車椅子(くるまいす)に太いバンドで固定します。
完成した絵は、白い部分もたくさんありましたが、明るくてとっても素敵な絵でした。
私が「今度、学級の壁(かべ)に飾(かざ)る絵を描いてほしいなぁ」と伝えると、彼女が言いました。
「はい。お役に立てれば、喜んで」
こう答えてくれた彼女は、満面の笑みを浮(う)かべていました。
その後、彼女の容態が悪くなって、すてきな絵を描いてもらうことはできませんでしたが、こんなすてきな言葉を彼女からもらいました。
「お役に立てれば、喜んで」
「ぼくは幸せ」
こんなにすてきな詩を書いてくれたのは、何度も入退院を繰(く)り返していた小学生の男の子でした。
「ぼくは幸せ」
おうちにいられれば幸せ ごはんが食べられれば幸せ 空がきれいだと幸せ
みんなが 幸せと思わないことも 幸せに思えるから
ぼくのまわりには 幸せがいっぱいあるんだよ
(次号に続く)
Information
「あかはなそえじ先生のひとりじゃないよ」
四六判・全248ページ
1400円+税
学研教育みらい刊