学ぶことは生きること~子どもの力を信じる②
あかはなそえじ先生の院内学級の教師として学んだこと「第100回」
院内学級の教師として、赤鼻のピエロとしてかかわるなかで、笑顔を取り戻し、治療に向かう意欲を高めていく子どもたち。その経験をもとに、子どもとの接し方や保護者・家族とのかかわり方、院内学級の必要性、教育の重要性などについて語ってくれます。
「ぼくは幸せ」
おうちにいられれば幸せ ごはんが食べられれば幸せ 空がきれいだと幸せ
みんなが 幸せと思わないことも 幸せに思えるから
ぼくのまわりには 幸せがいっぱいあるんだよ
この詩を書いてくれたのは、生まれたときから何度も入退院を繰り返してきた小学生の男の子です。
院内学級の教室で「しあわせ」について、みんなでおしゃべりをしていたときに、彼が教えてくれたことを詩にしてもらったものです。
入院や治療のために悩んでいること、苦しんでいることを、たくさん私たちに伝えてくれました。
そんな彼が、教室で最後に書いてくれた詩でした。
「待つこと」「聞くこと」「信じること」
入院中の高校生が教えてくれました。「僕の誇(ほこ)りは、病気をしたことかな」
「生きること、それはね……みんなと気持ちを分け合えること」と教えてくれたのは、小学校6年生のお子さん。
病院で学習を続けていた高校生は「医療的ケアがあっても、選択肢(せんたくし)がほしい。だから、そんな社会をつくるために大学に行く」ときっぱり言いました。
「お父さんでなくてよかった。お母さんでなくてよかった。お姉ちゃんでなくてよかった。私でよかった」と書き残した高校生。
病気になったのが私で──
本当にたくさんの子どもたちが教えてくれます。
そんな子どもたちの声やもっている力を、しっかりと受け止められるようになりたいと思います。
子どもたちが自分の中にあるものを、こちらに渡(わた)してくれるようになるには、とてもたくさんの時間がかかります。特に、なんらかの傷つきを抱(かか)えている子どもたちは、自分の考えや気持ちを伝えることをあきらめていたり、自分自身のことが見えなくなったりしている姿が見られます。
そんな子どもたちとの関わりで大切にしていること。
それは「待つこと」「聞くこと」「信じること」です。
ただ、これはとっても難しいことです。
子どもたちの行動を待てずに「早く、早く」とせかし、話をじっくり聞くことができずに「ちゃんと言いなさい、理由を言いなさい」とたたみかけ、子どもの力を信じることができずにこちらの考えを押しつけてしまう。
我々大人は、こんなことをたくさんやってしまいます。ひとりでは難しいので、多くの人とつながって、助け合いながら、少しでも子どもたちのモデルになれるように、と考えます。
子どもたちにとって「学ぶことは生きること」です。
そして、子どもの学びを保障する私や大人たちにとっても「学ぶことは生きること」です。
ですから、これからも子どもたちといっしょに学び続けていきたいと思います。
これまでお読みいただきまして、本当にありがとうございました。
また、どこかで。
Information
「あかはなそえじ先生のひとりじゃないよ」
四六判・全248ページ
1400円+税
学研教育みらい刊