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コラム・マンガ

学研の俳句おにいさんが解説 読解力が伸びる! 親子で味わう俳句 第2回

学研の俳句おにいさんが解説 読解力が伸びる! 親子で味わう俳句 第2回

27歳の若さで学研の編集者と俳人、2つの顔をもつ中西亮太が、毎回オススメの季語と俳句を紹介していくこのコーナー。第2回は、コロコロかわいい「木の実」です。

第2回 今日の季語 「木の実」(秋)

「よろこべばしきりに落つる木の実かな」をイメージする木の実の写真

よろこべばしきりに落つる木の実かな
(よろこべば しきりにおつる このみかな)

富安風生(とみやすふうせい)

喜びの音

この一句、素直に読んでみると、誰が喜んでいるのかがわかりませんね。木の周りにいる人? 落ちてくる木の実? これは、そのあたりの読み方を読者に任せた一句です。ここでは、作者が喜んでいると考えてみたいと思います。

何かいいことがあったのでしょう。作者は気分上々で道を歩いている。すると、その気持ちに共鳴したかのように、木の実がぼとぼとと落ちてくる。作者にとって、木の実が地面を打つ音は、自分が感じている「喜びの音」として聴こえていたのではないでしょうか。


さま〴 〵に転がしてみる木の実かな
(さまざまに ころがしてみる このみかな)

初代中村吉右衛門(しょだいなかむらきちえもん)

いろいろに試してみる

立てて回してみたり、横に倒して回してみたり、あるいは、指先でちょんと机に転がしてみたり……。退屈そうにどんぐりを回す人の姿が思い浮かびます。

もう少し想像を広げてみましょう。この木の実、きれいには回ってくれなかったのだと思います。ごつごつとした不格好な木の実。だからこそ、「さま〴 〵に」=いろいろに試しているのではないでしょうか。

私はこの木の実の描かれ方に、絶妙なリアリティーを感じています。上手に回っても、転がってもくれない木の実が、人間の思いどおりにはならない自然を映しているかのようだからです。作者が見た、少しもどかしい秋の姿だったのかもしれませんね。

中西亮太の「学研の俳句おにいさんが解説 読解力が伸びる! 親子で味わう俳句」は、第1・第3水曜にお届けします! 次回もお楽しみに♪


中西亮太(なかにし りょうた)

1992年生まれ。株式会社学研プラスの編集者。大学生のとき、甘い考えでうかつに俳句をはじめる。過去に、第14回龍谷大学青春俳句大賞最優秀賞、NHK-Eテレ「俳句王国がゆく」出演など。「艀」(終刊)を経て、「円座」「秋草」現代俳句協会所属。俳句とは広く浅く長く付き合いたいと思っている。秋の作品に〈雁を追ふ首ゆつくりと右へ右へ〉。

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