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コラム・マンガ

学研の俳句おにいさんが解説 読解力が伸びる! 親子で味わう俳句 第16回

学研の俳句おにいさんが解説 読解力が伸びる! 親子で味わう俳句 第16回

28歳の若さで学研の編集者と俳人、2つの顔をもつ中西亮太が、毎回オススメの季語と俳句を紹介していくこのコーナー。
今日の季語は「桜」。まさに日本を代表する美しさであり、その優しいピンク色は、春の象徴でもあります。

第16回 今日の季語「桜」(春)

さま〴 〵 の事おもひ出す桜かな

(さまざまのこと おもいだす さくらかな)

松尾芭蕉(まつおばしょう)

桜と思い出

今回の句の意味は明快ですね。散りゆく桜を詠(よ)んだ有名な作品です。

桜は満開にしてたちまちに、その花を落とし始めます。時折吹く風に舞い散る桜が、作者の目の前を過ぎていったのでしょう。花びら一枚一枚に呼応するかのように、楽しかったこと、うれしかったこと、悲しかったこと、腹が立ったこと……、さまざまな思い出がよみがえってきたのだと思います。

桜は、美しさとともに、もろさやはかなさ、淡さ、温かさといったイメージをもつ季語です。どことなく、思い出にもこうしたイメージがあるように思いませんか?
この句には、どんなことを思い出したのかは書かれていません。しかし、何も書かれなくとも、桜は読者一人ひとりの思い出を呼び起こし、句の描く景色に立つ作者への共感を導いてくれるのだと思います。

俳句のキーワード「松尾芭蕉」


もしかすると松尾芭蕉は「日本一有名な俳人」かもしれません。学校の教科書にも出てくるので、知っている人も多いはずです。芭蕉の著作に『おくのほそ道』があります。この本の序文には、次のような文章があります。

予もいづれの年よりか、片雲の風に誘はれて、漂白の思ひやまず、〔中略〕そぞろ神の物につきて心をくるはせ、道祖神の招きにあひて、取るもの手につかず

〔訳:私もいつのころからか、ちぎれ雲を吹く風に誘われて、同じように漂(ただよ)ってみたいという思いが強くなった。〔中略〕そぞろ神が取りついたように心がくるい、道祖神(どうそじん)にまで呼ばれているような気がして、何も手につかなくなってしまった〕


簡単に言えば、「旅に出たい!」という思いが抑えきれなかったということです。こうして芭蕉は、弟子の曾良(そら)を連れて、東北や北陸など、各地に旅に出ました。たとえば、かつて奥州藤原氏(おうしゅうふじわらし)が栄華をほこった地の平泉(岩手県)で作った次の句は、とても有名です。

夏草や兵どもが夢の跡(なつくさや つわものどもが ゆめのあと)

五月雨の降り残してや光堂(さみだれの ふりのこしてや ひかりどう)


今でも「俳人」というと、どこか世捨て人的なイメージがあるかもしれません。もしかすると、旅に生きた芭蕉のエピソードを重ねているのかもしれませんね。

中西亮太の「学研の俳句おにいさんが解説 読解力が伸びる! 親子で味わう俳句」は、第1・第3水曜にお届けします! 次回もお楽しみに♪


中西亮太(なかにし りょうた)

1992年生まれ。株式会社学研プラスの編集者。大学生のとき、甘い考えでうかつに俳句をはじめる。過去に、第14回龍谷大学青春俳句大賞最優秀賞、NHK-Eテレ「俳句王国がゆく」出演など。「艀」(終刊)を経て、「円座」「秋草」現代俳句協会所属。俳句とは広く浅く長く付き合いたいと思っている。春の作品に〈春月の寝息に混じりゆくごとし〉。

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