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コラム・マンガ

学研の俳句おにいさんが解説 読解力が伸びる! 親子で味わう俳句 第19回

学研の俳句おにいさんが解説 読解力が伸びる! 親子で味わう俳句 第19回

28歳の若さで学研の編集者と俳人、2つの顔をもつ中西亮太が、毎回オススメの季語と俳句を紹介していくこのコーナー。

今年は例年に比べてもあっという間に季節が進み、汗をかく機会も増えましたね。夏の子どもと言えば汗びっしょりのイメージですが、汗は俳句でどのように描かれているのでしょうか。

第19回 今日の季語「汗」(夏)

ボクサーを汗の果実と思ふなり

(ボクサーを あせのかじつと おもうなり)

松本てふこ(まつもとてふこ)

見立てる

5月19日はボクシングの日だそうです。今日は、そんな日にちなんだ一句を紹介します。

独特な感性で描かれたこの一句。「汗の果実」という言葉に、ボクサーのいきいきとした感じ、フレッシュな感じ、真剣な感じが凝縮(ぎょうしゅく)されているようです。「汗の果実」の表現に、作者の語彙力(ごいりょく)やセンスが感じられますね。

ボクサーを「汗の果実」ととらえたこともさることながら、この句の魅力は、「思ふなり」と、作者の感想や感覚を、正面から表現しているところだと私は考えています。

例えば、〈ボクサーや汗の果実のごとくあり〉のように、対象のボクサーに焦点を当てて詠(よ)み切ってしまうこともできたと思います。しかし、この作品は、「そう思ったんだよね」と軽く締めくくっています。これによって、作者の個性がより強く引き出された作品になっています。作者の顔が見えてくるからこそ、この作品は多くの人を惹(ひ)きつけているのだと思います。

みなさんも、日々の出来事の中で「思ったこと」を詠んでみると、俳句が少し身近に感じられるかもしれませんね。

俳句のキーワード「AI一茶くん」

AI(人工知能)をめぐっては、長らく「AIは感性や創造性、独創性をもつことができるのか」と問われてきました。今も多くの研究者たちがこのテーマに取り組んでいます。

このAIの研究と俳句との関連で、「AI一茶(いっさ)くん」という興味深い取り組みがあります。AI一茶くんは、北海道大学の研究チームによって開発された人工知能システムで、小林一茶や高浜虚子など、有名な俳人の俳句と風景写真を何万句、何万枚と日々学習しています。この学習によって、ある画像を見たとき、その場面をとらえた俳句が作れるようになったそうです。

AI一茶くんの作品に、次のものがあります。(※この画像を見て詠んだものではありません)


湖にうつる紅葉や窓の前(みずうみに うつるもみじや まどのまえ)

                      AI一茶くん


鳴き捨てし身のひらひらと木瓜の花(なきすてし みのひらひらと ぼけのはな)

                            AI一茶くん

今、AI一茶くんは、いろいろなメディアで取り上げられる「有名俳人」です。いつの日か、本物の小林一茶に並ぶ歴史的な俳人になる日がくるかもしれません。

〈参考〉北海道大学調和系工学研究室HP

中西亮太の「学研の俳句おにいさんが解説 読解力が伸びる! 親子で味わう俳句」は、第1・第3水曜にお届けします! 次回もお楽しみに♪


中西亮太(なかにし りょうた)

1992年生まれ。株式会社学研プラスの編集者。大学生のとき、甘い考えでうかつに俳句をはじめる。過去に、第14回龍谷大学青春俳句大賞最優秀賞、NHK-Eテレ「俳句王国がゆく」出演など。「艀」(終刊)を経て、「円座」「秋草」現代俳句協会所属。俳句とは広く浅く長く付き合いたいと思っている。夏の作品に〈浅黒き十指李(すもも)を並べけり〉。

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