小学生のうちから「生きる力」を育む! 金融教育の今
高校の学習指導要領が改訂され、今年度から高校では「資産形成」についての学習が新たに加わりました。従来の家計管理メインの教育からすると大きな改訂であり、高校生が株式投資などを学ぶことにびっくりした方もいるかもしれません。これらは、「金融教育」の一環として行われるものです。「金融教育」の波は高校に限らず、小中学校にも波及します。今回は小学校の金融教育についてお伝えします。
金融教育ってなに?
金融教育は、「生きる力」を養う手段として有効だとされ、金融広報中央委員会では以下のように定義しています(※1)。
金融教育は、お金や金融の様々な働きを理解し、それを通じて自分の暮らしや社会について深く考え、自分の生き方や価値観を磨きながら、より豊かな生活やよりよい社会づくりに向けて、主体的に行動できる態度を養う教育である。
つまり、金融教育は、お金を自身の問題としてとらえ、自ら考えて行動できるようにする教育です。子どもたちはお金を通じて社会や生活に関する知識・物事を、より具体的に理解できるようになります。
小学校の金融教育の目標は?
2020年度に改訂された直近の学習指導要領では、「買物の仕組みや消費者の役割」という内容が新設されました(※2、P64)。これは、自立した消費者を育てるために、買い物という金融教育を取り入れることで、実生活に根差したお金の理解を図るものです。
学習指導要領を見ると、以下のように学習内容の方向性が書かれています(※2、P65)。
⑴物や金銭の使い方と買物
ア 次のような知識及び技能を身に付けること。
(ア)買物の仕組みや消費者の役割が分かり、物や金銭の大切さと計画的な使い方について理解すること。
(イ)身近な物の選び方、買い方を理解し、購入するために必要な情報の収集・整理が適切にできること。
イ 購入に必要な情報を活用し、身近な物の選び方、買い方を考え、工夫すること。
高校生が学ぶような資産形成や投資の学習はありませんが、先の学びにつながる前提として、まずはお金の大切さや消費ついて学ぶことが小学生の目標です。
具体的な教育内容は?
具体的な教育内容としては、身近な物の購入について取り上げ、消費者としての自覚を促し適切な消費行動を学びます。例えば、買い物は売買契約ですが、買い物のどの場面で契約が成立するのかを学び、契約と約束の違いを考えさせるといった教育が行われます。
また、身近な消費生活を振り返り、自分の課題に気づかせるような教育も行われます。予算や購入の時期、購入場所を計画させ、さらに必要な分だけ購入することや、まとめ買いについても考えさせます。具体的には、調理実習や製作に使う材料を購入する場面を想定して必要な情報を収集・整理したり、その材料を購入する理由や買い方について意見を交換し合ったりする学習などが考えられています。
いかがでしたか?
小学校の金融教育では、金銭のやりとりを伴う買い物を通じて、買う前に情報を集めて整理したり、他の手段がないか工夫したりといった、購入前から考えて消費できる力を育てます。さらに、実際のお金のやりとりは社会でどのような意味をもつのか、お金の役割から社会の仕組みを考える教育へと発展する内容になっています。
成人年齢が18歳になり、12歳の小学6年生なら、あと6年で成人になります。そのような変化からも小学生のうちから生きる力を育む教育が始まっているのです。
参考