中学受験を検討している保護者、必見! カリスマ先生による 「はじめての中学受験」ガイド
中学受験にくわしい2人のカリスマ先生が、私立中学の特色や学校選びのポイント、親の心構えや準備など、中学受験とはどういうものかを5回にわたってわかりやすくお伝えします。
中学受験ジャーナリスト 瀬川信一
株式会社アーテック 野口祐希
★この記事は、2020年に行われたオンラインセミナー「はじめての中学受験」の内容を、最新情報に基づき再構成したものです。
<第4回>
どのように学校を選べばいいの?
②併願校の決め方
首都圏で中学受験をする場合、ほとんどの受験生が、複数の学校を受験する「併願受験」をします。本番の受験期間をお子さんが笑顔で乗り切るためには、併願校をどのように選べばよいのか、先生方に語っていただきます。
首都圏の中学受験は「併願受験」が基本
瀬川:ここまで、私立中学にはどんな学校があるのか、学校選びのポイントは何かについてお伝えしてきました。
●連載第2回/私立中学にはどんな学校があるの?
https://www.gakken.jp/homestudy-support/edu-info/exam/18467/
●連載第3回/どのように学校を選べばよいの? ①学校選びの重要ポイント
https://www.gakken.jp/homestudy-support/edu-info/exam/18559/
そして、いよいよ具体的に受験する学校を選ぶときに大切なのが、「併願校をどのように決めるか」です。
首都圏で中学受験をする場合は「併願受験」が基本です。1人のお子さんがだいたい5校ぐらい受験すると言われています。中には、午前・午後と掛け持ちで受験するお子さんもいます。
※併願校とは…第1志望校以外に受験する学校のこと。本人の希望や成績、保護者の希望はもちろんだが、各校の偏差値、試験日程、試験時間帯(午前・午後)など、さまざまな条件を考慮して決める。
第1志望の学校は、お子さんがぜひ行きたいと思っている、そして保護者も行かせたいと思っている学校です。多くの家庭においては、6年生の初めぐらいの段階ですでに決まっているのではないかと思います。
その段階の成績と比較して第1志望校の合格可能性を見ますと、多くの受験生にとって、ゆとりを持って受験するというより、挑戦するという位置付けになる場合が多いようです。
併願校は偏差値だけで選んではいけない!?
瀬川:だからこそどのように併願校を決めていくかが大事になってくるのです。中学受験の1年ぐらい前になって、実際のお子さんの学力や、各学校の合格偏差値がわかってきたら、具体的にどのように併願校を組んでいくか、いわゆる「併願パターン」というものを考えていかなくてはなりません。
※併願パターンとは…受験可能な学校の中から「実力相応校」「安全校」「チャレンジ校」などを数校ずつ選び、試験日程や試験時間帯、倍率、受験生本人の性格や体調なども考慮して、受験日程を組んでいくこと。
まずは、前回もお話したように、気になる学校を10校ほどピックアップして、その学校について調べていくという作業をしていただきたいと思います。
●連載第3回/どのように学校を選べばよいの? ①学校選びの重要ポイント
https://www.gakken.jp/homestudy-support/edu-info/exam/18559/
コロナ禍では、学校説明会に行けない場合もあるでしょうが、オンラインでの学校説明会も増えているので、そういう機会に情報を集めて、お子さんに合う学校を見つけてください。
受験が近づくにつれ、そこから絞り込んで併願校を決めていくのですが、その際、どんな基準で絞り込んでいくのかというと、模擬試験に参加した時などにもらえる「偏差値表」を使うことになります。
そして、偏差値表とにらめっこして、第1志望校に比べて合格の可能性が少しでも高い学校はどこか、などというような選び方をしてしまうことが多いのですが、私がそこでぜひ考えていただきたいのは、模試の成績や偏差値表だけで併願校を決めてしまってよいのか?ということです。
実際の試験問題でどんなことを問われているか、どういう出題傾向があるのかなどをよく見ていくと、偏差値による合否判定では見えてこない、学校とお子さんとの相性みたいなものが読み取れることもあると思うのです。
野口さんはどうお考えでしょうか。
出題傾向・過去問との相性が大事
野口:そうですね。受験となると、どうしても「偏差値」という指標を重視してしまいますね。基本的には、各校の偏差値が並ぶ偏差値表を見て学校を選ぶことになります。
ただ、偏差値表に載っている各校の偏差値は、あくまでも「合格率80%」程度で表されています。大手塾の四谷大塚の偏差値表も、合格率80%ラインで示されたものです
なぜ80%なのかというと、それ以上正確には出せないのです。
実際、塾で教えていると、本人の偏差値からみると受からないはずの学校に受かったり、逆に絶対受かると思われていた学校に落ちてしまったりということが、毎年のように起きています。
では、それは偶然なのかというと、決して偶然ではないんですね。先生より保護者のほうが、正しい結果を予測していることもあります。
先ほど瀬川さんがおっしゃった試験問題の出題傾向、つまり「過去問」との相性が大きいのです。家で過去問を解くと良い点数が出るなどとよく言われますので、必ずしもそれだけで合否の判定ができるわけではないのですが、子どもが解いた過去問の答案をチェックしてみると、ある学校の試験問題だけ点数がすごく高いというようなことがあるのです。出題傾向との相性については、受験校決定の判断材料として利用しましょう。
わが子にとって価値のある併願校選びを
野口:中学入試は、結局、一発勝負なんですね。高校入試ではないので、内申点がありません。これには良い点も悪い点もあって、実際、どんなにレベルの高い学校でも、その日だけすごく調子が良ければ、受かってしまうということも稀にはあるのです。
このように偏差値を超えて合格を引き寄せられれば理想的ですが、そのためには、受験期間中に精神的な余裕を持って入試を受け続けられるようにするということが重要です。3回目の受験までに最低一つの合格がとれるようなスケジュールを考える必要もあります。
何より大切なのは、偏差値が絶対ではなく、多少のぶれがあるということを意識して、偏差値ばかりにとらわれずに学校の候補を複数用意しておくことです。
偏差値表上では目立つ存在でなくても、わが家にとっては価値が高い、教育内容が自分の子に合っている学校、自分の子が生き生きと伸びていける学校を候補として持っていることが、中学受験においては有利になるのです。
この学校しか受けない、他の学校には全然興味もないという姿勢で受験をされる方もいるのですが、これから先の将来にわたる自己肯定感のためにも、中学受験の卒業証書として合格通知を受け取らせてあげたいですね。
(第5回につづく)
瀬川信一/中学受験ジャーナリスト
日能研本部で中学受験情報の執筆、講演活動に従事後、独立。各種中学受験情報誌への原稿執筆、首都圏の複数の学校へのコンサルタント、講演活動などを行う。2008年より学研Gネット(学研合格ネット)に情報センター長として参加。首都圏を中心に、関西、九州など、訪問した学校の数は200校を超える。かざらない人柄で、国立・私立中高一貫校の先生方と幅広いネットワークをもつ。
野口祐希/株式会社アーテック
日能研本部の理科専任、日能研上大岡校室長、啓進塾金沢文庫校室長を歴任後、独立して大岡山に中学受験専門塾を開校。さらに2008年学研の直営中学受験専門塾「学明舎」を開校し、学研Gネット(学研合格ネット)の立ち上げに尽力する。その後、学研エデュケーショナルを経て現職。Gネット専用塾教材『合格自在 理科』全巻、『カリスマ先生の合格授業 理科 生物・化学』『カリスマ先生の合格授業 理科 物理・地学』(学研)を執筆。理科専任講師・室長・塾代表という幅広い経験により、受験勉強での点数アップ法から塾生・保護者の不安の解消法、受験校の決め方や塾運営のノウハウまで、「裏ワザ・裏事情」にくわしい。