“全米最優秀女子高生の母”ボーク重子さんが指南!「非認知能力」を育むには③外に向かって表現する、行動する
アメリカでは、20年ほど前から、子どもを総合的に見る「Whole child approach」が主流になっています。そこで重視されているのが「社会的情動的教育(Social Emotional Larning、SEL)」です。
SELでは、以下の5領域が体系化されています。
- 自分を「理解」する能力
- 自分を「管理」する能力
- 他者を「理解」する能力
- 他者と「協力」する能力
- 責任ある「意思決定」をする能力
現在では、全米すべての州で、就学前の子どもへの「非認知能力」育成目標が法制化されています。
忘己利他の精神を
SELの5領域のうち三つは「対他者」「対社会」の能力です。つまり、友達や仲間と協力しながら、自分はどのように社会とつながって生きていきたいのか、自分の力を他者や社会のためにどう役立てていくのか。それを考えて生きていくことが、「非認知能力」を高め、よりよい人生、よりよい社会につながっていくということです。
子どもによく「将来の夢は何?」「大人になったらどんな職業に就きたいの?」と聞きますよね。でも、それだと、自分だけで完結してしまいます。
娘が通ったワシントンの幼稚園では、4歳から「どんな大人になりたい?」「どんなことで人の役に立ちたい?」という質問の仕方をしていました。私はそれにすごく衝撃を受けました。
外に向かって行動する、表現するというとき、自分や家族、自分の国だけでなく、会ったことがない多くの人のため、社会のため、地球のために、自分をどう役立てていくか。そういう大きな視野で「将来の夢」を語ることが大切だと思います。
だって、今、世の中はどうなっていますか? 地球温暖化は止まらず、気候変動が激しくなり、1000年に一度の地震があり、パンデミックが続いている。こんなこと、誰にも予想できませんでした。ボーダーレスな未知の課題に対して、よりよい解決策を作り出していくためにも、「対他者」「対社会」の視点が欠かせないのです。
幸せな人生のために
ご存知の方もいらっしゃると思いますが、シカゴ大学の経済学者、ジェームズ・ジョセフ・ヘックマン教授は、2000年にノーベル経済学賞を受賞しました。彼は、幼稚園児を40年間追跡調査し、人生の幸せと成功に大きく寄与するのが「非認知能力」だと述べて、注目を浴びました。以降、SELはアメリカのみならず世界中に普及しています。
アメリカでは、2018年の段階で、全米18の州で、高校卒業までのSEL到達目標が示されました。また、世界各地から、SELを使った教育によって、子どもたちの幸福度が上がった、人間力が上がった、そして学力が上がったという報告があります。
世界はもう、「認知能力」+「非認知能力」に移行しているのです。子どもたちの活動のフィールドはボーダレスになっていきます。世界の人々と協働していくためにも、ぜひ、「非認知能力」を伸ばしていってあげてほしいなと思います。
ほかのボーク重子さんの記事はこちら
- 子どもの創造性を引き出す、対話方法とは?
- 「非認知能力」を育てるために、やってはいけないこととは?
- 「自ら勉強をする子」に育てるためのヒント
- 受験シーズン到来! 親にはどんな心構えが必要?
- なぜ、受験で、学力だけではなく 「非認知能力」が求められるのか?
- 「非認知能力」を育むには①安心・安全な環境をつくる
- 「非認知能力」を育むには②子どもの主体性を育む