スポーツメンタルトレーナーに聞く 子どものやる気をぐんと引き出す声かけ【第1回】
スポーツや習い事や勉強に取り組む子どもに、親はどのように接して声をかければいいでしょうか。子どものやる気を引き出し、やる気スイッチをオンにする「声かけ」のコツを、スポーツメンタルトレーナーの伴元裕さんに聞きました。
何よりも大事にしたいのは、子ども自身が“楽しむ”気持ち
子どもの将来を思いやるからこそアドバイスしたくなる、保護者の皆さんの気持ちはよく分かります。ですが、大人のたった一言でお子さんが何かにより夢中になることもあるし、反対にやる気をなくしてしまうこともあるので注意が必要です。
私はアメリカの大学院で、ナショナルトレーニングセンターの取り組みについて学びました。そこでは、世界で活躍するアスリートを育成する方法を徹底的に研究し、実施していました。
USAチームでは選手の成長を目指すとき、6つのフェーズ(下の図を参照)に分けて段階ごとに少しずつステップアップしていくようにしています。
衝撃的だったのは、USチームがこの選手育成で【フェーズ1】を最も重視し、内側から原動力(楽しい、好奇心、うまくなりたい)が湧き出るように、トレーニングしていることです。
楽しむことが何よりも成長するための原動力になっているとして、将来、世界で活躍するアスリートを目指す場合も、スポーツ自体を楽しむことを大切にしているのです。
夢中になれないときは大人が手助けを
スポーツでも勉強でも、とにかくお子さんが楽しみさえすれば、次の段階に進めます。しかし多くの場合、この【フェーズ1】でつまずいてしまいがちです。
例えば、「自分の意志というよりは、お父さんが喜ぶからサッカーをしている」というお子さんがいるとします。このような場合はお子さんとの会話の中で工夫が必要です。
具体的には、サッカー練習が終わった後、「今日はどんな瞬間が楽しかった?」など、なんでもいいのでお子さんが楽しかった瞬間を認識させるポジティブな会話をします。
答えはなんでもかまいません。欲しい答えでなくても、余計なことは言わず、ポジティブな話をすることに徹してみてください。
サッカーをした時間が決してムダではなかったことを本人が言葉にすることで、少しずつ内側から原動力が湧き出てきます。
会話以外でも、例えば、文章に書いたり、絵を描いたり、お子さんが得意とする表現方法でポジティブなイメージを引き出し、そのイメージを認識させるといいでしょう。
心の在り方が変われば、子どもも変わる
内側から原動力が湧き出てきたら、次はどうするのか。
お子さんがスポーツに熱中して、大会や試合にも出るようになると、お子さんは元より保護者や指導する大人たちにも欲が出てきます。
しかしここで私が何よりお伝えしたいのは、「勝った、負けた」の結果を重視しすぎないことです。もちろん、勝った、負けたときに生じる感情を出すのはよいのですが、声かけには注意いただきたいのです。
「今日は1位になれなくて残念だね」と声かけしてしまうと、お子さんは勝たなければ、どれだけ努力してもムダなのかもしれないという思考に陥ってしまうリスクがあります。
そうではなく、例えば「チームのために最後まで頑張ってたね」「今日の試合のためにしっかり準備してたよね」などと、大会や試合に出るために努力したプロセスを褒めるべきなのです。
あるJリーガーから聞いた話ですが、大切な試合前にお父さんからメッセージがスマホに届いたそうです。そこにはこう書かれていました。
「結果はどうであれ、あなたがベストを尽くせば、家族みんなは誇らしく思う。」
結果が最優先であれば、どうしても練習などのプロセスに喜びを感じられなくなり、意欲も下がってしまいます。
しかしプロセスに価値を見い出せれば、本人の意欲は途切れない。長い目で見れば、結果にとらわれないことがお子さんの成長につながるのです。
第2回はこちら!
スポーツメンタルトレーナーに聞く 子どものやる気をぐんと引き出す声かけ【第2回】 | Gakken家庭学習応援プロジェクト マナビスタ
取材・執筆:松葉紀子(スパイラルワークス)