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【あした、親子で読みたい本】独創的な世界に引き込まれる 安野光雅さんの絵本 3選

【あした、親子で読みたい本】独創的な世界に引き込まれる 安野光雅さんの絵本 3選

 子どもの時に読んで感動した本は、大人になってもずっと心に残るもの。子どもたちが、自分だけの宝物になるような一冊に出合えるように、おすすめの絵本や読み物を元書店員でありJPIC読書アドバイザーの市川久美子さんにご紹介いただきます。


 昨年12月、絵本や風景画で親しまれた画家・絵本作家の安野 光雅(あんの みつまさ)さんがお亡くなりになりました。安野光雅さんの作品は子どもから大人まで親しまれ、内容も多種多様で、安野光雅さん自身にも感心が向きました。「小さなノーベル賞」ともいわれる国際アンデルセン賞のほか、たくさんの賞を受賞されています。
 今回は児童書の中から3冊紹介します。数多くの素晴らしい作品の中から3冊選ぶのは難しかったですが、幼い子どもから楽しめて大人も一緒に楽しめる絵本を選びました。もし、安野光雅さんの本に関心を持たれましたら、他の作品もぜひ読んでみてください。親しみやすくユーモアがあり、数学や科学について楽しく学べる絵本もあって、遊び心をくすぐられます。子どもたちの目が作品に釘付けになる場面に、何度も出会った経験が宝物です。

『ふしぎなえ』(福音館書店)

 安野さんが描かれた初めての絵本で文字のない絵本です。エッシャーの絵(だまし絵)に影響を受けて描かれたそうです。この絵本を子どもたちが夢中になって楽しんでいる姿を、何度となく見ました。大人も夢中になります。私はこの絵本から、エッシャーや福田繁雄のだまし絵を知りました。楽しい世界ですね。
 似た絵本で、他にも『さかさま』(福音館書店)、『ふしぎなさーかす』(福音館書店)という本があります。『もりのえほん』(福音館書店)のように隠し絵を楽しむ絵本もあります。(対象:3歳~)

絵:安野光雅
出版社:福音館書店
定価:900円+税
商品詳細:『ふしぎなえ』(福音館書店商品ページ)

『魔法使いのABC』(童話屋)

 ものがゆがんで映る鏡を見たことはありますか。この絵本はそんな楽しさを絵本にしたものです。アナモルフォーシスという技法で、遠近法の副産物とのこと。日本では「さや絵」といって刀のさやに映してみる技法があるようです。
 付録のセロファン・ミラーを缶に貼り、ひずませて描かれた文字や絵にミラーを置いて映してみると、ちゃんとした文字と絵になります。初めて見た時は、感動でつい声が出たほどです。子どもたちが夢中になって映す姿が忘れられません。表紙のひずみ絵から缶を置いて楽しめます。巻末には「ひずんだ絵のかきかた」があります。小学生以上のお子さんは自分で作って楽しめるでしょう。同じシリーズで、『魔法使いのあいうえお』(童話屋)もあります。(対象:4歳~)

作:安野光雅・安野雅一郎
出版社:童話屋
定価:2,300円+税
商品詳細:『魔法使いのABC』(童話屋商品ページ)

『旅の絵本』(福音館書店)

 世界各国の街並みを描く美しい絵本です。Ⅰ~Ⅸまで9冊あり、Ⅰは中部ヨーロッパ編、Ⅱはイタリア編、Ⅲはイギリス編、Ⅳはアメリカ編、Ⅴはスペイン編、Ⅵはデンマーク編、Ⅶは中国編、Ⅷは日本編、Ⅸはスイス編です。Ⅷの日本編では、安野さんの郷里である島根県の津和野が描かれています。
 小さな舟で旅人が到着し、馬と旅をしていきます。幼い読者はその旅人を追っていくのもいいでしょう。安野さんは各国でスケッチをされていて、各国の風景や国の特徴を細かく描いています。また、この本は所々に絵画・映画やお話のワンシーン・だまし絵など、どこかで見たことのあるものが描かれていて、何度見ても新しい発見があります。巻末の解説で、見つけられなかった絵を知ることもできます。(対象:5歳~)

作:安野光雅
出版社:福音館書店
定価:1,400円+税
商品詳細:『旅の絵本』(福音館書店商品ページ)

 

教師でもあった安野さんは、ほかにも「美しい数学」というシリーズも描いていらっしゃいます。その中の『赤いぼうし』(福音館書店)の読み聞かせをしたことがありました。真剣な顔で聞いていた子どもが、しばらくして突然「わかった!」と言ったときの満面の笑みは、今でも心に残っています。

市川 久美子(いちかわ くみこ)

監修者:市川 久美子(いちかわ くみこ)

元書店員。JPIC読書アドバイザー。1981年地域文庫の立ち上げに携わる。後に家庭文庫も開く。同じ小学校で15年以上読み聞かせ・語り・ブックトークを行い、作家さんなどの授業も15年企画。市立図書館・中学校図書館勤務の後、1999年より大型書店児童書担当として20年勤務。退職後は、児童書関連の執筆・講演を行う。著書に『ねんねのうた』(佼成出版)がある。

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